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第5話 ストレス性犬化症候群(2)
俺が犬神を、甘やかしたくてポメ太にする勢いで抱きしめたところ。
何故か、犬神が俺にキスをしてきました。
( な、なっ?!なんでぇ?! )
何度か啄まれて終わるかと思いきや、するっと滑り込んできた熱い舌の感触に背筋がゾワゾワした。
いやらしい水音が部屋中に響いて、1年振りの他人との接触に、気持ちがよくてふわふわする。
頭の中で『気持ちはないけど気持ち良すぎてやめられん!いいぞ!もっとやれ!』という俺の中のイカつい悪魔と、『同期で、しかも仕事仲間で仲のいい彼とこんな真っ昼間からこんな爛れた事を気持ちも無いのにしちゃダメだよぉ!早く離れてっ!』という俺の中の天使が脳内で喧嘩を始めた。俺の中の天使かわいこぶりっこだな。俺の見た目でぶりっこしないでほしい。ちょっとキモい。
脳内であらゆる争いを経てギリギリ、ぶりっこ天使が打ち勝った俺は、犬神を制止しようとしてキスの合間に言葉を放つ。
「犬、神……っ!ちょ、どう、した、っ!まっ、待てって、ん、ぅ……っ!」
「 ── っは、待てない。嫌だ。キスしたい。お前と、諏訪とずっと……!こうしたかった、っ。」
さっきスマホで見た " ストレス性犬化症候群の症状 " の中には『犬化から人間に戻って数時間は、普段抑えていた欲求を衝動的に起こす事が確認されている』と載っていた。という事は。犬神は、俺とずっとキスしたかった、ということ……?!
ふと、上司の洲崎さんの「犬羊 、応援してるからね」の言葉が浮かんで、この現場に洲崎さんいたら、きっと大喜びだろうなあなんて現実逃避していた俺に「諏訪……?俺以外の事、考えてるだろ。ずいぶん、余裕なんだな」って心ここに在らずな俺を営業部エースはしっかり見抜いていて。
見抜かれていてドキッとした俺は、必死の思いで顔を逸らした。
「も、やめようぜ……!同期でっ、しかも同姓で、おかしいってこんなの」
犬神の口元に必死の思いで両手を滑り込ませて止めた筈の俺の手。その手を犬神は熱い舌でべろ、と舐めた。
ぞくっとして「あっ!」と変な声が出た俺の耳元で「なに、それ ── かわいすぎ。諏訪の可愛い声、もっと、聞きたい」と低く響く妖艶な声で囁かれて、おかしな気分になる。
( これか……!これは確かに耳から孕んでしまう……! )
まさかの女性社員の意見に賛同してしまうほどの犬神の美声。俺は犬神の声だけで感じてしまったようで抵抗する力が入らなかった。
そんな俺を犬神は意図も容易く持ち上げて。
ソファから横抱きにされ、急な浮遊感に吃驚しすぎて思わず犬神の首に抱き着いてしまった俺に、犬神がうっとりと微笑んで。
頬に優しく口唇が落ちた。
「そんなにお前が余裕なら、もっと先、進んでいいよな? ── 寝室、つれてく」
「ちょっ……!嘘、だろ?!」
「本気だよ。お前の事、喰べたい。俺の事もっと、知って……?」
熱の籠った瞳に見つめられて、抵抗、出来ない。
ゆっくりと口唇が落ちると、犬神が俺の口唇を啄んで、その後舌が滑り込んできて舌を絡め出した。
くちゅくちゅ、卑猥な音が響いてゾクゾクする。舌の動きが気持ち良すぎて力が入らない。
( 俺、こんなに気持ちいいキス、知らない……っ! )
頭がふわふわしたまま、与えられる気持ち良さに何も考えられないでいると、気付けば寝室で。
ゆっくりとベッドに下ろされて、目の前には荒い呼吸の犬神が俺の胴体周りに股を広げて鎮座をして、俺を動けなくしている。完全に固定されていて身動きが取れない。
目の前の犬神の中心部は、バキバキに兆していて……うそだろ、まさか。と俺の脳内は混乱していて。男で。同期で。平々凡々なこの俺相手に。間違いなく目の前の彼は興奮しているのが目の前のブツでよく分かった。
でも俺は、今から起ころうとしている事が、本当に現実なのか、実感が沸かないのだ。犬神がポメラニアンになるのも、今のこの状況も本当は夢なんじゃないかと脳内が忙しない。
それでも。彼の喉が、ごくり、と大きく鳴るその様 に心臓の音が大きく早くなる。ドッドッドッドッ、と全身に血が駆け巡って、頭が沸騰しそうだ。
さっきまでの気持ちの良いキスを思い出して、それ以上の快楽を期待してしまう自分もいる。欲望と不安とが入り混じって動けない。洲崎さんが前に言ってた " 犬羊 " が、頭を過 って息が詰まる。
ぶりっこ天使が必死に警報音をカンカンと掻き鳴らしているのに。
イカつい悪魔がその警報音をぶっ壊しにいった。
そう。俺は、欲に負けたのだ。
「絶対に痛くはしない。諏訪に俺の手で気持ちよくなってほしい ── 俺の手で、お前の全部を、溶かしたい」
パーカーを脱ぎ払って、犬神の鍛え上げたられた筋肉が顕 になって。ゆっくりと、俺の耳元に彼が声を落とした。
「諏訪と、ひとつに、なりたい」
その表情に、声に、全てに。
心臓がきゅぅっ、と痛くなって。
俺は一切、犬神の動きに抗えず、嫌悪感もなく彼の全てを受け入れてしまったのだった。
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