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第20話 第3営業部に異動?(1)
「諏訪~!助けてぇっ!」
「へっ」
月曜。出社した俺に泣きついてきたのは、第3営業部の部長である河瀬 部長だった。
◇
「で?何がどうなったら、諏訪が第3営業部に異動って話になるの?」
「いっ、犬神、落ち着けって」
「えええ?!なんか犬神が怖いんだけどー!」
「はぁ。河瀬くん、フライングしすぎたわね」
河瀬部長は、俺たちの5個上の先輩で。第2営業部で立木 部長に育てられた営業成績も鬼の様に凄かった人だ。
2か月前まで第2営業部所属だったけど、新卒も沢山入って来るし、新しい分野を開拓しようと第3営業部という新規の部署を立ち上げて、そこの部長に大抜擢された稀代の商社マンなのだ。
俺たちふたりも凄く可愛がってもらっていて。犬神に関してはタメ口も許されているほどの仲。
そんな河瀬部長が、俺に朝イチ、出社早々にものすごい勢いで抱き着いて懇願してきたものだから。
出社までご機嫌で、ポカポカお花見日和だった犬神の空気はみるみるうちに冬の装いよろしく、氷点下まで下がっていったのだった。
その犬神を見るに見かねた第2営業部の立木部長が、犬神と俺と俺の上司で第2営業部事務長である、立木部長と同期の洲崎さんをミーティングルームに呼び出した。
で、現在に至るのだけど。
「異動、じゃなくて今週、一週間だけ借りたいって話。第3営業部、この前発足したばっかだろ?営業事務をうまく指導できる人材がいないのよ!犬神が獲得 ってきた大型案件、第3で回せないかって上層部が話を持ち出してきてさあ」
若手を取り揃えて発足した第3は、発足から2か月が経とうとしているが上手く機能をしていないらしい。" 小口案件ならまだいける " という微妙な状態らしく大抜擢された河瀬部長も参っているようだ。犬神が獲得ってきた" 第3のための大型案件 " を第2で捌こうということに先週まではなっていたはずなのに、どうやら俺たちが早退した金曜の午後の上層部の会議で第3が対応するように、と変更指示が発令された、らしい。
そういえば、この件で変更があったから月曜に打合せしたいと立木部長が犬神に連絡していたのを思い出した。きっとこの事を相談するつもりだったのを、河瀬部長がフライングしたのだろう。
起ち上げた役員が、この案件を第3で成功させて、第3の株をあげたい!という大人の思惑が蠢 いているという裏事情は部長達の中で専 らの噂になっている、という事を今になって知らされたのだけれど。
( ていうか、確かにもともと第3でやる予定ではあったけど、それが難しいって判断になったから第2でやるって話だったよな。それを急に第3で、なんてできるんだろうか?結構あの仕事、大変な、はず )
かくいう、俺はこの案件の資料を犬神と一緒にゼロから全て作成しているので、大変さはよく理 解 っているつもりだ。
「でな?上層部からの指示の後、部長会議で相談したら『諏訪に仕事の軌道が乗るまで第3を手伝ってもらったらいいんじゃないか』って立木さんが」
「 ── は、?部長?」
ますます犬神の温度が下がるのを感じた。それは、俺だけじゃなくて、ここに居る全員。
極寒も極寒の空気の冷え具合に、さすがの部長ふたりがピキッと固まる。唯一そんな犬神の態度に目を輝かせて興奮を隠しきれない洲崎さんを見て俺が、かなりドン引いていたのは、言うまでも、ない。
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