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第25話 相馬 慧という男
「やっぱり……!羊さんだ……!っ。ご無沙汰、してます。おつかれさまです」
「相馬 っ!あれ、お前、今、海外じゃ」
「第3が海外展開も視野に入れる方向性らしくて。俺と柏木 先輩が土台作りの為に招集かかって先週から第3 に」
俺に声をかけたのは、入社4年目で、第1営業部所属のホープである相馬 慧 だった。
第1営業部は海外企業専門の部署で、一年の半分は海外を飛び回っている奴ばかり。相馬は入社して一年間は第2営業部にいて。河瀬部長が相馬の教育係 をしていて、俺や新もサポートに入っていた流れで彼とよく話すようになった。
相馬は1年目からメキメキと頭角を表していたためか、2年目になって第1営業部へ異動になり、今年で3年目だ。英国 の血が4分の1入っているらしい彼は、小さい頃から長期休暇は海外へひとりで遊びに行くくらい英語はペラペラ。流石というべきか。
「そう、だったんだ」
「っ。声、久し振り……ていうか、うわ、もう。ヤバい。本物、エグい。最高すぎる」
「へ?え、なに?なんの、話?」
相馬の台詞に意味が分からず、首を傾げると「っ!」と胸を苦しそうに胸を抑えた。
彼がたまに、この奇怪?な行動を取るのは第2営業部にいた頃からで、全く変わってなくて何だか安心した。
「ははっ。変わってないな。元気そうで良かった」
「 ── 最初はやる気、なかったんだけど。金曜の部長会議で羊さんが手伝いに来るかもって聞いて。はー……ヤバ。ほんっとに、嬉しい。また一緒に働けるの、マジで嬉しいです。よろしく、お願いします」
ニコ、と微笑まれて。第3の女性社員からキャアッ!と黄色い声が上がる。そうなのだ。相馬も大変におモテになるのだ。
相馬は海外赴任の期間が長いから、普段黄色い声が上がるのは新なのだけど。相馬が第2にいる頃は、日本の犬神、英国の相馬とよく言われたモノで。
営業部の二大イケメンが第3 に出揃ってしまった。眩しすぎる。
「いやしかし。相変わらず、恰好いいね。こちらこそ、よろしく」
「は ──── ……、だめだ」
心機一転、新しい部署で力を合わせて仕事のパフォーマンスを上げるために笑顔で言葉を紡いだところ、後輩に溜息を吐かれながらダメだと言われてしまった。
何かダメなことを俺がしてしまっただろうか?と考えあぐねいている俺の両肩をガッシと相馬が掴んだことに吃驚して「うえっ?!」と突飛な声を出してしまった。恥ず。
しかし、目の前の彼を見ると、眉間にしわを寄せて、俺を見つめるその表情は切なげで。
ん?どうした?トイレでも行きたいのか?
「やっぱり……俺の気持ちは色褪せない。羊さん。俺……っ、貴方が、す」
「久し振りだな、相馬?」
「う、わっ!」
ぐ、と後ろに引っ張られて。バランスを崩した俺の身体に、トッ、と何かが当たる。
ふわっ、と俺の好きな香りが鼻を掠めた。この香りは、ひとりしか、いない。
新、だ。
「っ、あ、ら……、犬神ど、した?」
「犬神、さん。おつかれさまです。どうして、ココに?」
「第3に引継ぐ案件の指導にね。羊と、今日から来てるんだ」
「……羊……、」
「相馬はこの前の新規店舗確約した件、作業が大変だって聞いたよ。第1の仕事、忙しいだろ?第3の土台 作りは柏木さんに任せて、お前は早く第1に帰ったら?」
ん?なんだ???
新の空気が、なんだか、ピリピリ?している?
そういえば昔から、あんまり仲、良くなかった記憶……。
むむむ???
「犬神さんこそ、引継ぎなんて早く終わらせて、第2に戻ったらどうですか?鷲宮の新規展開で忙しいでしょう?こんな所で油売ってる暇……ないのでは?」
「えっ、ちょ、ど、どうした……?!」
我が営業部の二大イケメンが、何故か俺を挟んで火花をバチバチさせていて。
俺はふたりの間でアワアワと、ふたりを見比べながら。
彼らの圧に、飲み込まれそうな空気に冷や汗を流したのだった。
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