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第26話 我が社の二大ハイスペイケメン

「 ── で。逃げ帰って、来たと。」 「いやぁ。そういう、わけじゃ」  結局、あの後。バチバチ火花を散らして見つめ合うふたりの間にずっといるのがしんどくなってしまった俺は「第2に必要な資料があるから、ちょっと取ってくるわ!」と第3営業部から脱兎の如く飛び出してしまった。  第2営業部に来た流れで、ふたりの関係性を知ってる立木部長と洲崎さんをミーティングルームに呼び出して、何か解決法はないか相談してみる事にしたの、だけど。 「犬神と相馬、なあ。んーでも、最初は仲、良かっただろう?何があったんだ。気が付いたらあまり話さなくなっただろう」 「確かに。相馬くんは最初、犬神くんに懐いてたわね。逆に諏訪くんには、冷たかった……よね?」 「あ、洲崎さんも気付いてました?そうなんスよ。最初は相馬、俺に当たりキツかったですよね」  相馬が入社してすぐの頃のこと。彼が第2営業部にいた頃は、新と相馬は仲良かった記憶が残っていて。相馬は同じ営業部隊の新に懐きまくっていて、俺のことはどちらかというと毛嫌い?というか、" 同じ部署にいる犬神先輩と同期の、どうでもいい営業事務の先輩 " というような対応で。  それが、いまや相馬はワンコの様に俺を見つけると俺の元にやって来てくれる様になったんだけど。うーん、相馬と話をするようになったキッカケはなんだったか。  思いを巡らせ、ふと思いついたのは相馬が入社して半年くらい経った時の、初めてひとりで担当を持った時のことだったのを思い出した。 「相馬が俺に懐いてくれたのって、鷲宮の仕事の時、かなあ」 「ああ!あの時の!相馬くんが初めて単独で受け持って、初めてやらかしたやつね!」 「や、あれは、結果的にやからしちゃったけど、相馬にとっては可哀想なやつで」  3年前。その当時、あの麗しい見た目に、新卒の1年目なのに仕事もバリバリ出来ていたからか。  相馬をやっかむ人間も悲しいかな存在していて。  相馬が初めてひとりで立ち回った大型案件で、相手方との打合せ直前に相馬の作った資料を俺が新に頼まれて目を通した時に、ミスを見つけたのだけれど。  そのミスは明らかに、作為的に間違った修正されている形跡があって。  犯人捜しは後回しで、一先ずは膨大な修正が必要で。相馬と俺、そして洲崎さんとあと数人の営業事務で手分けして作業したのだ。 「っ、諏訪、先輩……、すみません」 「大丈夫!心配要らないから!取り敢えず、みんなで手分けすればすぐ」 「いえ、この件も、そうです、けど。それよりも今までの、態度……あんな態度取ってた俺の事なんか手伝わなくても」 「へ?何言ってんの?あんなの、どうってことないよ。気にしてない。確かにちょーっと、俺に当たりキッツイなー、とか。思っては、いたけど?」 「ぐ。そ、そう、ですよね」 「うーん。でも、だからって、さ。初めての大型案件で、よくここまでひとりで進めたお前の資料をさ。突き放すなんて馬鹿な事は絶対しない。もっと営業事務(おれたち)を頼ってよ。もっと甘えていいんだよ。そのために、俺たちがいるんだから」 「……っ!」 「ホラ、手止まってる!急げ!」 「っ、はい……!」  手分けして修正した資料で無事、相馬は大型案件を見事獲得。  後日、データ改竄(かいざん)した犯人が、データ解析して保存内容から営業部内で見つかり( 特に目立っていて、自分よりも功績を上げそうなのが嫌だったという妬み嫉みから来た犯行だったようだ )、その人間は減給処分からの自己都合退職という形でその事件(?)は幕を閉じたのだけれど。  そこから、相馬の俺への態度は、急変したのだ。 「おはよう、ございます。羊、さん」 「?!、お、はよ」 「うわ、ヤバ。めっちゃ、かわい……!なんで、今まで気付けなかったんだ、俺の馬鹿……!」 「へ」 「羊さん。今日、俺の資料、手伝ってほし」 「相馬!コッチ。お前は今からコッチで打合せあるから。諏訪、おはよ。相馬、つれてく」 「犬神さん?!え、今日打合せの予定なんて、なかったはず」 「あるの。今、この瞬間に打合せの必要性が出来た。お前はコッチ」 「っ!羊さん!また、後で!」 「お、おう……???」  突然の名前呼びからの、毎回近距離での会話を始める相馬に新が颯爽と現れていなくなる、という流れがこの頃くらいから恒例の光景だった。の、だけど。思い返した新の態度に自惚れMAXの自分が顔を覗かせた。 ( もしかして。もしかしなくても、新のあの態度って……嫉、妬?)  これまで何も気にしていなかった新の態度が、気持ちを認識した途端にパズルが嵌ったかのように、ストンと納得がいって。それ以外にも相馬絡みで思い返される彼の態度に胸がぎゅぅ、っとなる。あの時も、なんならあの時だって、全部。嫉妬から来る行動なのかもと、新の行動の全てが俺の都合のいいように認識されていって。  ポポポっと頬が熱くなるのを感じていると、俺の様子に気付いていない洲崎さんが、はあ、と溜息交じりに口を開いた。 「あのふたり。相性、悪いのよねえ」 「相性」 「そ、相性。水と油、っていうか。近くにいると燃えあがっちゃうっていうか。あ、諏訪くん安心して?あのふたりがどうこうなるとかそういう意味じゃないから」 「っ!そこは、心配してない、ですよ」 「どっちかっていうと。諏訪くん、なのよねえ」 「へ?」  " どちらかと言うと俺 " の意味合いがよく分からなくて首を傾げると「あ、ううん。何でもない、コッチの話」と言われて混乱したけど、洲崎さんの話は理解できないモノが多いから、流す事にした。今は、一杯一杯で他の事を考えている余裕がないのだ。    今も、何しているんだろうと思い浮かぶのは、ひとりだけ。  俺の頭は、今、新で占められているのだから。  

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