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第39話 あの子と彼の繋がり
「 ── 俺……いつの間にか、寝てたのか」
重い瞼をゆっくりと開ける。
軽快な音を奏でる俺のスマホの画面に表示されている時刻は7時ぴったり。いつもだったら何度かスヌーズをかまして30分は引き延ばすところだけど、新が帰ってくるまでに、昨夜俺が汚してしまったシーツを綺麗にしておきたくて。出社前に洗濯と乾燥をしたかったから、のっそりと重い身体を起こした。
浴室に備え付けられているドラム式洗濯機の中に、洗濯物を入れて洗濯から乾燥までを自動でしてくれる魔法のボタンを人差し指で押すと、ピッ、という高い音が鳴って数秒後に洗濯機が動き始めた。
目の前でゆっくりと回り始めたシーツを眺めながら「は ── ……」と長い溜息を吐いた。その溜息は、洗濯機のゴウンゴウンという音に吸い込まれていく。
今日はまだ、火曜日。約束の一週間まであと2日だ。
( 俺……気持ち、言いたくてしょうがなくなってる……あと2日なんて。多分絶対、我慢……出来ない )
昨夜、新と電話で話をしている途中もずっと新は俺に「好き」「羊しかいらない」と会話の隙をついては甘いワードを投下してきて。その度に何度「俺も」と言いそうになって。でも、電話越しじゃなくて面と向かって直接言いたくて思わず出そうになった言葉をぐ、と堪えて必死に耐えまくった。
こんなにも他人に気持ちが無意識に出そうになったことが、今までの人生の中で一度としてなかった俺は正直、その状況にはちゃめちゃに戸惑っていた。
第3営業部の指導は、確実に俺の自信に繋がっていることも実感していて。
ちょっと前まで " こんな俺なんかのどこが " というものが、 " 新の隣で、俺がアイツを心から笑わせたい " に変化していることも間違いないのだ。
( ……決めた。今日、新は夕方までには帰ってくるって昨日言ってたし、第3の指導をそれまでには確実に終わらせる……! )
入社3年目の日下部 と堂前 がキーパーソンだ。
彼と彼女が、第3営業部の営業事務の中でも群を抜いて的確な判断、処理が出来ると昨日の段階で目星を付けていた。
俺は出張中の河瀬部長と洲崎さんにチャットで、彼らに処理の全てを今日の午前中に叩き込む流れにする旨を報告した。
( がんばれ、俺。新に、好きって。付き合ってって……今日、言う )
新と離れて過ごして余計自覚した。俺は、アイツが横にいないとどうにかなってしまいそうになる。
彼は俺に、知らない感情 をたくさんくれた。そんな彼とキチンと向き合って、その上で一緒にいたい。
フライングも甚だしいけど、このまま言わずに2日も一緒に過ごすなんて、到底無理なのだ。
「 ── よし。気持ちの方向性が決まったら何か腹減ってきたな……メシ、食べるか」
電話で「家にあるものは何でも使ってもらっていいから」と了承をもらっていたので、食パンをトースターで焼いて、スクランブルエッグを作ってウィンナーとベーコンを軽く焼いた。
キッチンに鎮座しているコーヒーメーカーの使い方も彼から教えてもらっていて。
迷う事無くコーヒーを落として、部屋中にいい香りが漂った。
ふと、そのコーヒーメーカーの奥に、写真立てがあることに気付いた。
まるで隠されているかのような配置に、見てはいけないのかもと思いもしたけど " もしかしたら小さい頃の新が見られるかもしれない " と好奇心の方が勝ってしまって俺は、わくわくしながらその写真立てを手に取ったのだけど。
「 新の小さい頃の写真かな、 ── え……?」
その写真には、俺が小さいころに出逢った、黒髪の女の子と。その横には女の子に似た黒髪の女性が映っていた。
「え……っ、なんで……?」
コーヒーが出来上がったのをお知らせするブーという音を聞きながら、俺はその場で呆然としてしまったのだった。
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