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第41話 食堂での出来事(2)
俺の受け取ったトレイには、艶々の白ご飯に、食欲をそそる香りのするデミグラスソースがとろとろに掛かった大きめのハンバーグと、その横には真っ白いシーザードレッシングがかかった新鮮なレタスやトマトがあしらえられたサラダ。そして口直しのお新香と、ほかほかと湯気のたった具材たっぷりの豚汁がのっていた。
「ぐっ……最高か……!」
「ははっ。美味そうですね。鯖の味噌煮も美味しそうですよ。さ、早く座りましょう」
「あ!相馬、今日は第3の日下部と堂前が席取ってくれてるんだ。一緒に食べよ」
お待たせ、と言いながらふたりが座る席に相馬と向かうと日下部が「そ!相馬先輩?!」と素っ頓狂な声を上げて立ち上がった。
アワアワする彼を、堂前が「ちょっと落ち着きなさいよ」と言いながら座らせると「こちらの席、どうぞ」と前の席に誘導してくれた。
「すみません、相馬先輩。日下部 、先輩の大ファンで」
「や!も!まさか!お昼、同席できるなんて!うわ!やば!サインください!」
「ええ~?サイン?(笑)いくらでも書くけど、何の価値もないよ?」
「いやっ!俺にとっては!宝物です!家宝にします!」
そう言いながら、日下部が出したノートの最終ページに相馬は内ポケットから取り出したボールペンで『相馬 慧』と綺麗な字で書き記した。
( 相馬って字も綺麗……!えっ、本当に何でもできちゃうんだな )
あまりに綺麗な字に感心してジッと見てると「羊さん?」と相馬から呼びかけられた。
「どうしました?俺の字、何か変です?」
「や、違う、違う!その逆。字がさ。めっちゃ綺麗で吃驚した。相馬ほんと完璧すぎる……!こんだけ完璧だと、彼女も心配でしょうがないだろうな~」
「彼女」
「へ、うん、彼女。え?相馬、彼女、いるだろ?」
「す、諏訪先輩……?!」
「嘘だろ。このひと気付いてないの……?!」
「へ?」
目の前のふたりが何故だか目を白黒させている。
俺はなんでこんな状況になっているのか分からなくてキョトンと小首を傾げると相馬の方から「羊さん」と声が聞こえて。
声のする方へ振り替えると、にっこり微笑んだ男前の相馬と、目の前には一口サイズになった鯖の味噌煮があった。
「はい。あーん」
「へっ?!え、と。あ、あーん?」
思わず流れで、差し出された鯖の味噌煮を口に入れると、芳醇な味噌味の染み込んだ鯖が口の中で蕩ける。
「う……っ!んまー!やば!」
「ふふ。よかった。はい、もう一口。あーん」
「ぁ、んっ!うまー!」
「羊さん?ハンバーグ。欲しいです。一口。さっき俺がしたみたいに、してくれる?」
「!いいよ!はい!」
「あーん、は?」
「え、っと。あー、ん?」
「ふふ、……ん。美味しい……あ。そうだ。社食で一緒にご飯なんて、滅多に食べられないから記念に写真、撮りましょ?」
「え?!今?!ちょ、ま」
「はい、チーズ。……うん、かわいい。ありがとうございます」
「えええもう撮ったの?!早すぎ」
「はい。撮りました。さ、食べましょうか。冷めちゃうと美味しくないですよ」
「それも、そうだな。いただきます」
目の前のハンバーグは間違いなく熱々の方が美味い。
相馬の意見は間違いないと、自分の口へ運んだハンバーグは、鯖の味噌煮同様とても美味しくて。
ひとり感動していたら、相馬は横で「はあ……間接的じゃなくて、早く本物にしたい……」とか箸を咥えながら言っていて意味が不明だったけど、聞き返しても上手く躱されそうな気がして気にせずランチを堪能した。
その頃には、日下部と堂前は食べ終わっていて「食器片づけてきますね」とふたりは先に席を立ったのだった。
*
「ねえ。諏訪先輩……相馬先輩の諏訪先輩への気持ち駄々洩れすぎなのに、気付いてないの凄くない?」
「相馬先輩不憫だよな……!でもそこも推せる……!うーん、でもさあ。応援したいのは山々なんだけど……俺、諏訪先輩は犬神先輩とうまくいってほしいから、何も伝えないつもりなんだ……!相馬先輩ごめんなさい……!」
「あれ?日下部、ワンラブ会員だったよね?推しは独り身の方がいいんじゃないの」
「違うんだよ……犬神先輩、諏訪先輩が近くにいると滅茶苦茶、甘い雰囲気になるの本当にヤバいから……!」
「えっ。日下部もしかして……腐男子?」
「うっ!うぐぅ。そうですぅ」
「わっ!ちょっと!今度洲崎さんと3人でお茶しよ!」
ふたりが食器を片付けながらそんな話をしてるなんて知る由もない俺は、数日後に洲崎さん、堂前、日下部の3人に、遠巻きにニヤニヤ見つめられて意味が分からなくて「えっなんなの。洲崎さんとおんなじ匂いのする人がまた増えた」と慄いたのは、また別の話。
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