15 / 31

第15話 ねがい

 吸われて、少し痛いくらいにしびれている耳の下をなぞりながら、ノアは口を開いた。   「ローグさん」 「……ん」 「あの……、これって、もっとしっかりつけたら、もうちょっと長持ちしますか?」 「ああ?」  眉間に皺を寄せて振り向くローグに、少し慄きながらも、言葉を重ねる。  あまりに何度も()()をされるのは、ノアにとっては心臓がもたない気がしていた。 「これ、この……、お守り、ですかね。これって、もっと強くつけてもらったら」 「お前なあ……」  額に手を当ててうなだれるローグに、何か間違えたらしいことを悟る。 「同じとこ一箇所だけ、くっきりついててもあんま意味ねえだろ。」  そう言うもんなのか?  ノアの顔を見たローグが、ため息をついてから、指先でノアを呼んだ。  呼ばれた通りににじり寄ると、そのまま首元に顔を近づけられて、鎖骨の上に吸い付かれた。 「ひあ……っ、ぁ、ぁっ」  びっくりして体をよじると、そのまま寝床に倒れ込んで、ローグが上になった。  それでも唇が離れず、なんだかおかしな声が漏れるのを止められないでいると、ローグの顔はすぐに離れていった。 「そうやってあちこち吸い付いて……、相手をかわいがるもんだ。」  心臓が胸の中で飛び跳ねて、吸い付かれたところからぞくぞくがあふれ出していて、指先までが小刻みに震えていた。 「寝ろ。……二度と言うな」  毛皮が頭から被せられて、ノアはその中に丸くなった。  口元を手で押さえて、息をとめる。  ローグに謝るべきだった。  だけど、何をどう謝ればいいのかも、わからなかった。  目が覚めると、あたりがほんのりと明るくなっていた。  足元に何かが触れていて、顔を向けると、ローグの頭がそこにあった。 「……また。」  寝床を奪いたいわけじゃない。  だけど、昨日あの後、あんなことをしたローグが、おとなしく寝床に入るわけがないことも理解できた。  少し胸が苦しくなる。  この人が、自分の番いならいいのに。  そう思った。  ……思ってしまった。

ともだちにシェアしよう!