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第18話 命令
それきり黙り込んで、夜は静かに過ぎていった。
トッドが眠れたかどうかはわからなかったけれど、ノアは少なくとも眠れなかった。
意識を手放すことはできず、外が薄明るくなる頃には、トッドの天幕を出た。
明け方、まだ誰もが眠っている頃合い。
騎士たちを起こしてしまいたくなくて、ノアはすこし離れたところにある馬のためのスペースへ足を向けた。
すでに起きて草を食んでいた馬たちの中、ノアの連れてきた体の小さな馬は、とりわけ大きな馬と仲良く並んでいた。
ノアに気づいた馬の一頭が、こちらに足を向けた。
頬をなで、鼻づらなどを確認して手を放す。
それから飼い葉を出そうとして、鞄を火の近くに置きっぱなしだったことに気がついた。
「悪い、ちょっと待ってろよ。先に水持ってくるね」
馬に申し訳なくて、首元をなでくりまわしてから桶を手にする。
まずは水だけでも、と急いで何往復か水を運ぶと、すこし息が上がってきた。
体も温まり、朝の冷えた空気がひんやりと気持ちいい。
ずっと胸の中にもやもやしていたものを深呼吸と共に吐き出して、ノアは拠点へと走り出した。
昨日はきっと、ローグも眠れたはずだ。
そう思っていた。
朝もやの中、火の前に座るローグを見つけるまでは。
ローグは、昨日の装備を全て身につけたままだった。
火のある場所の近く、木箱に座る人影が見えて、ノアは足を止めた。
人影が、こちらを向く。
手にしていた小枝を、火の中に放り込んだ。
「……ローグさん」
「お前、今までどこにいた」
静かな声がノアを刺した。
「……他の方の、天幕にお邪魔していました」
ぱちぱちと小さな音を立てて、小枝が燃えていく。
ローグが足を動かして、また細い薪を手に取った。
「お前が俺から指定された寝床はどこだ」
「してい……」
ローグの手元、薪がいくつかに折られて、少しずつ火の中に放り込まれる。
「俺が、ここの指揮官として、お前に指示した寝床はどこだ」
握りしめた手のひら、爪が食い込んで、痛いほどだった。
「ローグさんの、……天幕です」
ローグが全ての薪を火の中に放り込んだ。
ぱっと、火の中から火の粉が散る。
「指示が守られないと、安全も秩序もない。通常なら即刻帰らせる。」
立ち上がり、ノアに向き直った。
「二度と同じことすんな。命令だ」
まっすぐ。
まっすぐ目を見て、感情のない目で、ローグにそう指示された。
「はい……、申し訳ありませんでした。」
それきり、ローグは天幕へと戻っていった。
ノアは、しばらくそこを動けなかった。
ノアをあざ笑う小石たちはおらず、一人で、自分の甘えを噛みしめていた。
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