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第21話 帰結
腕を持ち上げてノアを立たせると、ローグはノアから手を離した。
騎士もまた立ち上がってローグを見た。
鼻で笑って口を開く。
「命令なのか?じゃあ、今日はこいつは俺んとこで寝ますよ。ちゃんと申請しときゃ構わねえだろ?」
「……ぁあ?」
ローグが低く唸るのに、ノアは足を半歩下げた。
掴まれた腕が、まだびりびりとしていた。
「あんた結局、こいつに浮気されて拗ねてるだけだろ。こいつはあんたが大事に囲ってやるタマじゃねえってこった。なあ、こいよ」
騎士の手が伸びてくるのに、大きく体をのけぞらせてよける。
バランスを崩しそうになるのを、ローグの腕に掴まれて、ノアもその肩を掴んだ。
「……アホか。どー見ても嫌がられてんだろ。」
いくぞ、と腕を引かれるままに、ローグの天幕へと歩みを進める。
「おい、あんただって嫌がられてねえってことねえだろ」
騎士が後をついてくるのを、タープの前で足を止めたローグが振り返った。
ノアからは、その顔は見えなかった。
「そう思うか?」
「……あ?」
ローグの手が、ノアを天幕の方へと突き飛ばした。
二、三歩よろめいて、二人を見る。
「この目隠し、誰が立てたと思ってる。……かわいいやつだろ」
ノアを背にして騎士に向き直り、軽く剣帯に親指をかけたローグが言った。
そのローグの顔を、食い入るように見る騎士を置いてローグが天幕を振り返った。
低く抑えた声で「入るぞ」と言い、乱暴に垂れ布の留め具を引っ張りはずすと、ローグは靴も脱がずにノアを天幕の中に引きずり込んだ。
「ローグさんっ……」
天幕の中、ローグの腕で寝床に押さえつけられて声を上げそうになると、その親指がノアの口に割り入って、奥歯の奥を押さえつけられた。
ローグの指が触れているところから、びりびりした震えが伝わって、背中に落ちていく。
「ふぁっ……」
そのまま襟元を緩められて、ローグの舌がぬるりと首すじを這った。
そこからも痺れのような、くすぐったさのような刺激が広がり、閉じられない口元から息が漏れ出ていった。
「ふ……、は――ぁ、ひぅっ」
なんとか抵抗したくて身をよじると、その分服がはだけていき、ローグと触れ合ったところの肌が全て小さく震える。
両足に力が入り、その間にあったローグの足を、こすりつけるようにして挟み込んだ。
そのローグの膝が折り曲がり、ノアの体を少し押し上げる。
同時に――離れかけていた唇が、ひときわ強く、首の付け根を吸い上げた。
「ぁ――あ!」
体中が跳ねて、それ以上抵抗できなくて、思わず目の前の体にしがみつく。
それでも、身体中を駆け抜ける震えを逃しきれなくて、靴を履いたままの足をローグの足に絡めた。
「……ローグっ」
ローグを呼んだ悲鳴のような声が、天幕を突き抜けていった。
驚いて息を止めると、ローグも動きを止めて、ノアの口の中から親指を抜き取った。
「静かにしてろよ……」
震える呼吸をそのままに、肩口に感じるローグの吐息を味わっていると、外から小さな舌打ちと、砂を踏む足音が聞こえてきた。
聞かれていた。
思わず体が縮まり、しがみつく手指に力が入った。
いつのまにか背中を掴んでいた指先が、肩甲骨に触れる。
何も言えないでいると、ローグが体を起こして、ノアの肩口を解放した。
真正面から、ローグに見下ろされる。
親指で固定されていた口の端から、唾が垂れてひんやりしており、ローグに吸い付かれたところは、どくどくと脈打っていた。
まっすぐローグの目線がノアを射抜き、それから、ローグの顔が近づいてきた。
少し目を伏せたローグに、思わず息が止まる。
その唇に目線がとどまり、目を離せない。
後少し、吐息が混じり合う距離、ローグが口を開いた。
「これが、お前のしたことだ」
身体中に、震えが走った。
「トッドは明日から、お前に二回振られたかわいそうな男だし、俺はお前に骨抜きの、間抜けな指揮官ってことになる」
ローグが、ノアのことを見ていた。
「覚えておけ」
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