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第31話 無題
「――解消、ですか」
あの拠点での数週間を経て、ノアは帰還後二日経ってようやく砦の自室に戻ってきた。
自室に戻ってみると、自室の管理課とつながる扉には、二通の封書が届いていた。
一通は、ノアが拠点に閉じ込められたことを知った管理課からの、労り。
もう一通は、無事帰還したことを控えめに労う内容と、急ぎ伝達すべき事項があることを知らせる内容だった。
いつでも対応可能であることを返書し、すぐさまにノアは管理官との面談に臨んでいた。
管理官は、静かに頷いた。
「先日、あなたのディッカー候補の方からお申し出がありまして」
「……なぜ、でしょうか」
一月ほど前の顔合わせのことを思い返してみる。
大きな体の人だったが、威圧的な態度を取ることもなく、ノアに対しては断ってくれていいとまで言ってくれた。
番いさえすれば、ノアに魔力を貯めて、人並外れた魔法を行使できるディッカーとなれる。
そのチャンスを目の前にして、断っていいと言える人を、率直に尊敬した。
だから、この話は断らないと決めていたのに。
「ご本人からは、ご自身の都合で。とのみ」
自分の誇りを預ける先がある。
そのことが、少なからずノアの心の支えでもあったのに。
指先が白く冷えて、思わず両手を組み合わせた。
「ブラントルさんが希望するのであれば、候補であった方との面会を設けることも可能です」
管理官の言葉がするりと耳の奥に入り込んできて、
――ノアは呆然としたまま頷いていた。
「お願いします」
自分の支えを取り去ろうとする理由を、知りたかった。
でも。
知らない方がいいことだって、この世にはあるのだろう。
面会に臨んだノアは、自分が開けるべきでない箱を開けたことを痛感した。
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