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【1話.咲希との出会い】
1月の終わり、いつも通りバ先に行ったら今月で閉店してしまうと店長から聞かされた。
ここのコンビニは高校時代から4年と少しの期間働いていたので、まだしばらくはここで働けるんだと漠然と思っていた。
急な話でごめんねと謝られたが、内心どうしようという気持ちでいっぱいだった。
今月の給料は出るけど来月からはどうする?
家賃に電気代、普通よりは安いけどこのままだと払えなくなる。
ここの店長はΩに理解のある人だったから雇ってくれたけど、ここまで辿り着くのにどれだけ時間が掛かった事か。
急に次のバイトを探すってなっても高卒のΩなんて雇ってくれる店そうそうないだろう。
「はぁ……」
頭の中でぐるぐる考えながら帰りの電車を待っていた。
アナウンスでもうすぐ次の電車が来るのが分かった。
座れるといいな、と思いながらぼーっとしていたらグイッと腕を引っ張られた。
「へ……?」
「危ないよ……?」
振り返ると小柄な水色の髪の人が立っていて俺の腕を掴んでいた。
一瞬経ってから俺が電車に飛び込もうとしていたことが分かった。
「ぇ、なんで俺……」
「大丈夫?ちょっとどこかで休んだ方が」
「ご、ごめんなさい迷惑かけて、大丈夫…です。」
「全然大丈夫そうじゃないんだけど、ちょっと着いてきて」
その人はそう言って手を繋いだままどこかへ向かっていった。
カラン
駅の近くにあったカフェに入って席に座る。
「さ、なにか頼もっか。何がいい?」
「ぁ……えっと、じゃあホットココアで」
「分かった、僕はホットミルクにしよっと」
しばらくすると店員さんが飲み物を持ってきてくれて一口飲んで見るとその温かさでほっとして涙が出そうになった。
「あの、言い辛いかもしれないけど何か嫌な事でもあったの?」
「そ、の…働いてたバ先潰れちゃって……。」
「あら」
「俺Ωなんで次のバ先見つけるの簡単じゃないなって悩んでて」
「あー、それは悩むよね。今一人暮らしなの?」
「あ、一人暮らしです」
その人は「そっかあ……」といいながらホットミルクに口を付けていた。
「実家に一旦帰るのは?」
「ぁ……えっ、と」
「もしかして、難しい感じかな……?」
「その、俺父と仲悪くて、それで家出てきたんで……難しいかもです」
「……そっか、それは戻るの嫌だよね。」
知人じゃないからなのか何故か話しやすくてずっと頭の中でぐるぐる悩んでいた事を話してしまう。
「すみません、暗い話しちゃって」
「ううん!俺から聞いたんだし気にしないで」
「……あ!そういえば名前って聞いてもいいですか?俺風澄って言います」
「忘れてた!さきって名前だよ、花が咲くの咲と希望の希で咲希!」
「綺麗な名前ですね」
「風澄くんもね」
そう言ってふふっと笑う咲希さん。
可愛らしい人だな……と自然に思った。
「あのさ、風澄くん」
「はい?」
「コンカフェとか興味無い?」
「コンカフェ?」
聞いた事のない言葉にハテナが浮かんでしまう。
「そ!似たお仕事だとメイドカフェとかが近いかな〜」
「あ、メイドカフェならなんとなく分かります」
確かメイド服を着てお客さんにかわいい感じの接客するやつだよな……?
行ったことはないけど動画などで見た記憶を思い浮かべた。
「僕そのコンカフェってやつのオーナーやってるんだけど、もしよかったらそこで働いてみない?」
「……え?!」
「もし合わなかったら辞めてくれてもいいし、お給料は一週間ごとに出るよ〜日払いも可!!」
今の俺からしたら求めていた条件ばかり並べられてすぐに頭が整理できない。
「い、いいんですか?俺Ωなのに……」
「そんなの関係ないよ、君見た目もいいしうちの店の制服すごく似合うと思うんだよね」
「……咲希さんがいいなら、働きたいです」
「やったあ、交渉成立だね〜」
ぴーすぴーす♪と言いながら俺より嬉しそうにしている咲希さん。
本当にいいのかなと心配になる。
「じゃあいつから出勤するか決めよっか、この日の中で空いてる日ある?」
「いつでも行けます……!一番近い日でお願いします」
「やる気があっていいね、じゃあ明後日来てほしいな。住所送るね〜」
「ありがとうございます」
そんな感じで咲希さんのコンカフェで働く事になり、おかげで不安の種は1つ消えた。
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