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第18話 もっと、深く*
ラツィエルの手に扱かれ、レーシュはあっという間に達してしまった。恥ずかしさと手を汚してしまった罪悪感に苛まれ、「ううー」と泣きながら唸ることしかできない。
「よしよし、上手くできたな。レーシュ、それでいいんだ」
「うー、ごめん……」
「まだ苦しいだろう。もう一度いけるか?」
「あっ! まだ、ぃゃ、だめぇっ……」
あやすように褒めてくるラツィエルの声も砂糖菓子みたいに甘い。胸に顔を押し付けぐすぐす泣いているレーシュは、自分が子供になってしまったような心地だった。
されていることはとんでもなく大人の行為だったとしても、だ。
くたりと力を失ったはずの性器は、ラツィエルの手に包まれると瞬く間に漲 っていく。体も楽になったと感じたのは一瞬で、とめどない情欲が再び全身を満たしている。
達したばかりで敏感になった場所を触られるのはつらい。レーシュはラツィエルの膝の上でびくびくと体を跳ねさせたが、優しく擦られるうちにまたイきたくてたまらなくなってしまった。
ドレスで見えないけれど、触れる前にも先走りでぐちゃぐちゃになっていた場所からは粘性のある音が響いている。羞恥で死にそうなのに、たまらなく気持ちいい。
ラツィエルの手は大きくて、ゴツゴツしていた。見た目にそぐわず真面目な彼は、自宅でも剣術の鍛錬を欠かさない。いつもレーシュを守ってくれる手は優しく、しかし力強く高みまで導こうとしてくれている。
「んっ。あ……――んんっ!」
ラツィエルの首元に抱きつき控えめな喘ぎを漏らしていたレーシュは、そう経たずして二度目の絶頂を迎えた。ぎゅっと力の入った体はだんだん弛緩し、くったりと力が抜ける。
「よくできたな、レーシュ。少し休め」
「ん……ありぁと……」
ようやく終わったと、安心して眠ったレーシュを目覚めさせたのは、またもや耐えがたい熱だった。
「らつぃ、ラツィエル……あつい……!」
「くそっ、どれだけ強い薬なんだ! レーシュ、屋敷についたから。運ぶぞ」
体の中心が張り詰めて痛いほどだ。丸まった体を抱えられ、レーシュはラツィエルの寝室に運ばれた。目を閉じていても、ライラックの香りでそれだけはわかる。
「ふぇ……助けて……」
「ラツィエル様、とにかく水を飲ませてください。アルコールの影響もあるようです。体内で薄めるだけでも、意味はあるかと」
「ダアト、媚薬に解毒剤はないのか!?」
「厄介なことに、毒じゃなく薬なんですよね……。時間が経てば抜けていくでしょうが、身の内に溜まった熱を発散しないと、脳にも影響が出ると言われています」
「は……?」
「あなた様が発散させてあげないと、後遺症が残る可能性もあるということです」
家令とラツィエルがなにを話しているかまでは理解できなかった。戸惑った表情のラツィエルと目が合うと申し訳なくて、レーシュの目にはまた涙が溜まる。
「ああ、それ以上泣くと目が溶けるぞ……」
「あ、んっ」
「…………」
目元を優しく拭われただけで、悩ましい声を出してしまった。翠の目が丸く見開かれる。
レーシュの顔は見るに堪えない状態になっているはずだが、ラツィエルは今さら現実を目の当たりにした様子で顔を真っ赤にした。
ああ、またさっきの気持ちいいやつをやってほしい。
レーシュにだって自慰の経験くらいあるが、ラツィエルに触られるのは予想を遥かに超えて心地よかった。
「ラツィエル様、あなたの妻でしょう」
「……わかった。とりあえず出ていってくれ。レーシュが恥ずかしがるから、姿は見せないようにサポートしてくれると助かる」
「畏まりました」
寝室から家令が出ていくと、ラツィエルはグラスをレーシュの口に当てて水を飲ませようとしてくる。だがレーシュは早く体をどうにかしてほしいと、そればかりを考えていていやいやと首を振った。
違う、ちがうの。早く触って。
「レーシュ、お願いだから飲んでくれ」
ラツィエルに取り合わず、レーシュは煩わしい服を脱ごうとしていた。これが邪魔だから触ってもらえない、と短絡的に考えたのだ。
男性用の服と違って、細い体にぴったりと沿うドレスは脱ぎにくい。引っぱってもうまく行かず、途方に暮れてラツィエルを見上げたときだった。
「っんぅ!?」
顔を両手で包まれ、唇が重なる。びっくりして開いた唇の隙間から水が口の中に送られる。甘い。
レーシュは甘く感じる水に夢中になって、ぬるくなったそれを「んく、んく」と懸命に飲んだ。
全て飲みきり、物足りなくてラツィエルの口の中にまで舌を伸ばす。ぬるぬるの舌が絡められて、レーシュは夢中でそれを吸った。
甘い。美味しい。違う……すごく、気持ちいい。
「らつぃ、もっと」
顔を離された途端に追加を強請り、レーシュは乾きが満たされるまで口移しで水とキスをもらった。
気づけば服はすべて剥ぎ取られ、ラツィエルの手が全身を撫でていた。いや、正確に説明すれば、ラツィエルの両手はレーシュの胸の上にある。
「ああ、あんっ」
皮の厚い人差し指の腹でくりくりと胸の尖りを転がされると、甘い声を抑えられない。
直前、レーシュは下肢へと待ちに待った刺激を受けながら「なにをされた、どこか触られたか」と尋問のように尋ねられた。答えた結果、ラツィエルは胸を集中的に責めてきたのだ。
全身敏感になっていたけれど、そこへの刺激はなぜか下半身に直結した。気持ちよさにひんひん喘いですぐに達してしまう。
もう三度も達してしまった。それ以上触られるのは本当につらくて、でもまだ体の熱は去らなくて。泣きながら訴えるとラツィエルの口はレーシュの花芯を捉えた。
驚くよりも先に手よりも優しい刺激を感じて、蕩けた頭はうっとりとしてしまう。ぬめる口腔内で扱き育てあげられて、両胸まで愛撫されると、四度目の絶頂を迎えるまではそうかからなかった。
もう出るものもないと思う。一度達したあとの感覚なんて未知の世界で、レーシュは自分の体がどうなっているのか、自分のことなのにさっぱりわからない。
それなのにラツィエルはごくりと何かを飲んで、ようやく身を起こした。
「レーシュ、どうだ?」
「きもちい、かった」
「あっ、ああ……そうか。――よかった」
ぽやぽやした頭でとりあえず浮かんできた感想を伝えると、ラツィエルはもにょもにょと口元を緩めた。
まだ、終わっていないと感じる。とはいえ一旦の小康状態を迎えた体は、全身に纏わる不快感に気づく。
「ラツィ、お風呂。あたま、洗って」
「あー……そうだな。わかった」
喋るのも億劫なほど体が怠くてすぐにでも眠ってしまいたかったが、あらゆる体液でべたつく皮膚と、頭の染め粉は落とさないと気持ち悪い。
自分で洗って当然なのに、今日はここまでラツィエルに甘えているんだから風呂くらい入れてもらってもいいだろうと図々しく考えたのだ。
案の定、すぐに頷いてくれたラツィエルにふにゃ、とふやけた笑みを向ける。泣いて性欲処理までしてもらって、これ以上恥ずかしいことなんてない。
全部見せたのに、レーシュを見捨てないでいてくれる夫の存在が嬉しくて、胸の中が温かくなった。
「あー、可愛い。ここまでしても通じてないんだろうなー……」
「ふぁぁ」
小さくあくびをしていたレーシュは、「おいで」と広げられた腕の中にころんと転がり収まった。
しかしながら、髪を洗ってもらい全身も綺麗にしてもらった頃には、レーシュは再び発情していた。
もういやだ。いったい何度同じことを繰り返せばいいのだろう? 花芯は頭をもたげているが、間違いなく人生で一番擦られたせいで皮膚が赤くなって痛々しい。
風呂の中でラツィエルがそこに触れようとしたときも、レーシュは「痛い!」と手を払いのけてしまった。ごめん、と宥めるキスが額に降ってくる。
自然にそれを受け取ってから瞼を上げると、気遣わしげにレーシュを見ている目と目が合った。その瞳の色を見れば、本当にただレーシュのことだけを心配してくれていることがわかる。
この人は、なんで、こんなにも。
胸がいっぱいになって俯くと、レーシュの落ちた視界の中にラツィエルの下履きが映った。上着やトラウザーズを脱いでレーシュの入浴を手伝っていたものの、慣れないことに彼もなかなか水浸しになっている。
肌に張り付いた下履きのせいで、その下にあるものの存在感が浮き立っていた。それが勃起していることはレーシュの目にも明らかで、ざわっと興奮に皮膚が粟立つ。
腹の中がドクンと疼くのを感じた。
そこをじっと見つめられていることに気づいたラツィエルが恥ずかしそうに身をよじる。しかしもう一度目が合うと、深い湖のような翠の奥に、確かな情欲の熱が灯っていることに気づいた。
彼もなにかを悟ったらしい。レーシュの背中を支えていた手がするすると下りていき、ふやけそうになっているそこに指を置いた。
「は、ぁんっ……」
「レーシュ……触れてもいいか? 痛いことは絶対にしない。たぶん、前に触れなくてもイかせてやれると思う」
「挿れて」
「は?」
「一緒に……イこう? ラツィエル」
レーシュはただ、本能に突き動かされていた。
この熱をどうにかしてほしい。もっと気持ちよくなりたい。ラツィエルに触ってほしい。もっと、深く、触れ合いたい。
自分の体でラツィエルになにか返せるものがあるなら、という思いもあった。
両腕を伸ばすと、体を寄せてくれる。もう一度耳元で誘いを掛ければ、ぎゅ……っと強すぎるくらいに固く抱擁された。
レーシュは沸騰する頭でも気づいてしまった。いつの間にか、自分はこの男のことを……体を許せるほど好きになっている。
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