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最終話 初夜のやり直し*

「あっ、んんっ。あ……あっ、あ!」  太い塊がグッと奥を突き上げる。膨張した性器がレーシュのなかを満遍なく擦り上げるから、その度に快感が電流みたいに生まれて、体中を痺れさせていく。  ラツィエルに身を委ねてから随分時間が経っていた。挿入前に二回も達してしまったから頭がぼうっとして、ずっと眩しいくらいの快感に包まれて光の中に揺蕩っている気分だ。  レーシュはすっかり忘れていたが、繋がるまでには長い時間と丹念な準備が必要だったらしい。後ろを弄られる違和感と闘い、ときにはラツィエルを足蹴にしてしまったが、なんとか挿入に至ったときはこれ以上ない充足感に満たされた。  ラツィエルは力のないレーシュの腰を支えて、こちらの反応を一秒たりとも見逃さずに、体の中を突いてくる。 「んっ、う、う~……っ、はあっ……」  粘膜で感じるラツィエルの性器は硬く、熱かった。もう気持ちよさしか得られず、接吻しすぎて紅い唇から絶えず呻きと喘ぎがこぼれ落ちていく。  真上にある必死な表情。彼の額に汗の滴が浮いているのを見ると肚の中がきゅんとして、より強くラツィエルを締め付けてしまう。 「くっ……」 「あっ、らつ、らつぃっ……いっあっ!」  余裕のなさそうなラツィエルが愛おしい。もっと余裕のないレーシュは揺すられながらもその顔を一心に見つめていた。  アンティークゴールドの睫毛に囲まれた翡翠が、同じくレーシュを見つめている。  硬い猛りで丁寧に、絶え間なく愛撫された肚の中はぐずぐずに蕩けている。火照った内壁が熱いものにぴたりと密着している。気持ちが良すぎて、涙が出てきた。 「んぅ、ああっ、きもち……ラ、ツィ……あっ、あんっ」  全身から汗がふき出して呼吸も苦しいくらいなのに、もっと一つになりたくて両手を伸ばす。言わなくても気づいてくれるのは、十年で積み重ねてきたものがあるからだろうか?  体を寄せようとしたラツィエルはふと思い直したように、レーシュの体を起こして膝の上に乗せた。繋がったままだから、自重でググッと奥まで入っていく。 「う、んん、ああ~……っ!?」  硬い先端が柔らかく狭い内壁を割って、奥まで入り込んできた。たっぷり愛されてほぐれた内腔はラツィエルの性器をやっと根元まで飲み込んだらしい。  未開の地は苦しいと思ったのに、動かなくてもじんわりと気持ちいい。レーシュは力なく開いた唇から「んぅ……ッ」と声を漏らした。  両腕できつくラツィエルに抱きつく。ああ、求めていたのはこれだ。顔を上げると顔中に優しい雨のようなキスが降ってきた。 「んっ、ふふっ」 「レーシュ、本当にお前は綺麗だ……」  優しいキスがくすぐったくて笑うと、ラツィエルはしみじみとそんなことを呟く。綺麗だなんて言葉、他の誰に言われたって響かないのに……。  胸がきゅうっと締めつけられる。涙と汗でひどいことになっているはずのレーシュの顔を見てよくそんなことが言えるものだ。 「……んっ。あ、ああっ、らつぃ、~~~~あ!」  唇を塞がれた瞬間、ラツィエルの腰がレーシュを揺らした。大きく動いているわけではないのに快感は一層大きく、目の前で光が何度も弾ける。  繋がった場所は熱くて溶けてしまったみたいだ。硬いペニスが腹の中をかき混ぜる。  奥を捏ねられるのがこんなにも気持ちいいなんて。  すっかり勃ち上がったレーシュの花芯が、ラツィエルに突き上げられるたび腹の上でふるふる揺れている。もう出すものもないはずなのに、絶頂の気配が迫ってくる。 「も、いくっ……あ……だめ、もう……あ、う……あぁぁ……っ!」 「俺も……くっ、」  瞼の裏に星が散る。繋がった場所から起こった快感の爆発は光となって全身に広がり頭の中を真っ白に染め上げた。  達しながらもレーシュはラツィエルを必死で抱きしめた。ラツィエルも先端を奥に押し付けて、一番深いところで吐精した。  奥に熱を感じる。内壁がキュウキュウと収縮して情熱を受け止め、歓喜に震えるのを感じた。  ラツィエルはレーシュの目元に唇を押し付けてくる。レーシュは濡れて重い睫毛を持ち上げ、潤んだ瞳でラツィエルを見上げた。  二人の視線が交差する。繋がったままで、今度は触れるだけのキスを繰り返す。  不思議だった。  自分は我ながらもっと淡白で、愛情に満ちた触れ合いをしたいと思ったこともない。なのに今、感じたことのないほどの温かい多幸感に包まれているのはなぜなのだろうか。 「レーシュ……大丈夫か?」  思いやりを目に宿したラツィエルが、気遣わしげに尋ねてくる。レーシュはふ、と納得した。 (他の誰でもない、ラツィエルだからなんだろうな……) 「意外に……激しい運動だったな」 「ははっ、そうだろうな」 「んっ。ちょっと、揺れないでよ!」  手は大丈夫だけど、明日は動けないかもしれない。そんな予感に素直な感想を口にすると、ラツィエルは太陽みたいに笑った。  繋がった部分は達したことでさらに敏感になっている。些細な刺激でさえも蕩ける快楽に変換されてしまい、レーシュは甘い吐息をこぼした。  再びシーツに横たえられる。ラツィエルが慎重に腰を引いていくなか、違和感がレーシュを襲った。  吐精して小さくなったはずのものが、ググッと中で膨らむ。 「……待って、なんでまた大きくしてるの?」 「不可抗力だ……」 「ちょ……っあ! ひああんっ」  性器の張り出した部分が腹側の膨らみをえぐる。その瞬間パチッと電流のような快感が突き抜け、レーシュは背を反らし喘いだ。  ラツィエルの動きもぴた、と止まる。まだ先端は孔を出ていない。 「「…………」」  二人は見つめ合った。ラツィエルの瞳に揺らめく炎は、レーシュの葡萄色の瞳にも灯っているだろう。  だってある意味初夜のやり直しみたいなものだ。また快感に泣かされることをわかっていても、レーシュは両脚をラツィエルの腰に回した。 「ラツィ、来て……」  ◇  ある清々しい朝、朝鳥のさえずりによってレーシュはいつになくスッキリと目覚めた。体を起こすと、窓の向こうには落葉樹の枝に小さな鳥が何羽か止まっている。  室内は暖かいが、外は冷えた空気によって遠くの山まで見渡せる。鳥は寒くないのか……とぼんやり考えていると、隣から腕が伸びてきてレーシュはシーツの中に引き戻された。 「わっ」 「今日は休息日だろう」 「そうなんだけど。昨日すごく早く寝たから……なんか目が冴えちゃった」 「んー……」  聞いているのかいないのか、目を閉じたままぎゅっと抱きしめてくる。自分よりも熱い体温が心地よい。  しかしレーシュのぼさぼさに爆発した髪が鼻に当たるようで、何度か不満そうに首を振っていた。  ラツィエルが早起きじゃないのは珍しいことだが、理由は昨晩遅くに帰ってきたからだと分かっている。  先週、イェツィラー国王との会談が国境付近の屋敷で行われた。ラツィエルはアツィルト側の国王陛下の護衛として近衛騎士から抜擢され、一週間ずっと任務についていたのだ。  会談の目的は例の麻薬事件の落としどころをつけることだった。  セーデル侯爵と繋がっていたのは、彼の死後数か月に及ぶ調査によってイェツィラーの王弟だと判明した。そこでイェツィラー側に「国王が指示したんじゃないのか」と書簡を送りつけたところ、イェツィラー国王も一筋縄ではなく「アツィルトの高位貴族は忠誠が甘いようですね」と返してきたらしい。  国王同士の会談はいったいどんなものだったのか……ハニエルもついて行っていたから殴り合いにはなっていないはず。  そんなこんなでラツィエルが帰還し一週間ぶりの共寝だったが、レーシュはずいぶん早く寝落ちしてしまっていた。一応は待っていようと考えてソファにいたはずなのに、どうやらラツィエルにベッドまで運ばせてしまったようだ。 (卵も大きくなってきて、祈ると疲れるんだよなあ……一人だと特に)  レーシュとラツィエルの子を宿した卵はすくすくと育っている。特に二人で祈りに行き始めてからの成長は目を瞠るほどだった。  ――ずっと卵は消えてしまったと思っていた。しかしラツィエルが生命の樹へ見に行ったとき、確かに呼ばれている感じがしたという。  ここだ、という場所で立ち止まって目を凝らすと、さやさやと揺れる梢から緑の葉がポトリと池に落ちた。ラツィエルの視線は落ちた葉ではなく、梢の先にある白く半透明な卵に釘付けになった。  ラツィエルもレーシュと同じように、「俺の子だ」とすぐ分かったらしい。  なんとなく卵に求められている気がして、ラツィエルは衝動のまま膝をついて祈った。しばらく祈ってから見上げると、卵は心なしかツヤっとしていたそうだ。  小さな小さな卵は、両親とも全然来てくれなくて拗ねていたのかもしれない。いったいどっちに似たのか……生まれてもないのにラツィエルと小さな口喧嘩に発展したことは言うまでもない。  春には卵から赤子が孵るだろう。自分が親になるなんて全く想像がつかないけれど、ラツィエルとならどうにかなると信じられる。 「ね、ラツィエル。起きたら一緒に祈りに行こう」 「うん……一人で行くな……よ」  まだまだ眠そうな頬をつつく。もちろん一人で行くつもりはないから、起きるまで待っていよう。  ラツィエルと想いが通じ合ってから、なぜかレーシュはよりいっそう注目を浴びるようになってしまった。雰囲気が丸くなって後光が差しているとか、幸せそうな空気感に酔いそうだとか、よく分からない理由らしい。  まあ、旦那様が目を光らせているから無謀な行動に出る人はもういない。ただ王宮内でも街中でもうっとりした視線をたびたび感じるので、レーシュはやっぱりうんざりしていた。  だからなるべくラツィエルと共に行動し、朝も宰相執務室まで送ってもらっている。  みんな、こんなおじさんの何がいいのか。しかしこの歳でも子供ができることはあると証明されてしまったし、ラツィエルは今もレーシュにぞっこんだ。 「離縁、しなくてよかったな……」  不穏な言葉を察したのか、ラツィエルの腕によってさらに強く抱きしめられる。寝息はすうすうと健やかだ。レーシュはわずかにひきつれが残った手で、その背中を優しく撫でた。  レーシュが離縁を思い立ってから学んだのは自分の価値なんかではない。ラツィエルというかけがえのない夫の大切さだった。 「……愛してるよ」  レーシュも目を閉じる。瞼の向こうは明るい。レーシュを包む体は逞しく温かく、ライラックの香りがした。  春はすぐにやってくるだろう。 ◇ 最後までお読みいただきありがとうございました! 本作はfujossy小説大賞に応募しています。もし楽しんでいただけましたら投票いただけると嬉しいです◎ 番外編まで投稿してから完結設定にいたします。

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