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5-惨めに名前を呼びました ※R-18

ぼふん、とベッドに仰向けになったまま倒れる。もちろん弛緩しきった身体で抵抗できるはずがなかった。 「ちょ……待って待って待って!何!?意味わかんねーんだけどっ!」 口だけはまともに話せることに気がついて、それだけは安心した。意識はしっかりしている。体の自由が効かないだけだ。 「何って、撮影」 「映画の台本にこんなシーン無かっただろ!ふざけんな!」 「だって映画じゃねえもん。AVだよ、AV」 「え……!?」 ヨコヤマが悪びれずに言う。意味がわからなかった。たちの悪い冗談だと信じたかった。 だってそれは所謂、男と女があれこれしているのを楽しむための映像であって、俺は男だ。エグチもヨコヤマも男だ。オールキャスト男、そんなAV、俺は観たことない。 ましてやそれに自分が出演するなんて、想像できない上に気持ちが悪くて、頭の中が一瞬でぐちゃぐちゃになった。 「知らねえの?男同士のAVだよ。君みたいな子って人気あるし、最近はボーイズラブって言うの?そっちの趣味の女にも需要あるんだぜ」 嫌だと叫びたい。なのに、息を大きく吸い込むための筋肉さえうまく動いてくれなくて、蚊の鳴くような声で悪態をつくしかなかった。 「大人しくしてたら、ちゃんと金は払ってあげるからさ。ちょっとだけ我慢しててよ」 「ひ、あっ……!?」 エグチの手が、するりとTシャツの裾から内側へ滑り込む。くすぐったくて、気持ちが悪くて、詰まったような喉から変な声が出た。 嫌だ、やめろ、ふざけんな、と思いつく限りの罵詈雑言を吐きながら、残った力を振り絞って身をよじる。 エグチが「チッ」と舌打ちした。 その瞬間、エグチの右手が上がる。バシン、と乾いた音。痛みと揺れで目がチカチカした。 (……あ……だめだ……こわ、い) 怖い。エグチは未だに張り付いた笑顔を浮かべてはいるものの、動けない俺を生かすも殺すもこいつら次第だと気づく。一気に恐怖がこみ上げた。 のこのこついて来た、1時間前の俺を自分で殴ってやりたくなった。 : : : Tシャツはあっと言う間に剥ぎ取られて、上半身は裸。下半身だってジーンズの前は大きく開けられてしまって、いつパンツごと脱がされてもおかしくなかった。 「はい、ちゃんと足開いてー」 暴れる術をもたない俺は、されるがままにエグチによって足を開かされる。仰向けになった俺の股の間に、エグチが膝をつくような体勢になった。 カメラは下から煽るように情けない俺を撮影している。エグチが息を荒くしながら、俺の首筋に顔をうずめた。べろり、とぞくぞくするところばかりを舐められて気持ちが悪い。 「どう、気持ちよくなってきた?……って言うか、なってもらわねえと困るんだけどさ。嫌がりつつも最終的には乱れまくりって言うのが売りの企画だから」 ふるふる、と首を振る。力が入らなくて、頭がずいぶん重く感じる。 「そんなこと言ってるけど、こっち触ったら一発だよ」 「ひゃっ……!」 ジーンズをずらして、エグチは太ももをぺちぺち叩きながらにやりと笑った。ヨコヤマが透明のボトルをエグチに手渡す。 蓋を開けるとドロッとした液体がエグチの掌に滴って、俺はぎょっとした。 「さっきの薬、残念だけど気持ちよくなる成分は入って無いんだよね。代わりにローション(これ)塗ってあげるから」 粘ついた液体が、太腿に伸ばされる。容赦ない冷たさに身体がびくついた。エグチの手がやらしく、ぬるぬると太腿から股の付け根まで滑っていく。 「これもちょっと薬混ぜててさ、粘膜に直接塗るとやばいらしいよ」 粘膜って何だ。恐怖を顕にしながらエグチをみると、パンツの上から指でとんとん、と尻の割れ目の奥を突かれた。全てを察した俺は、恐怖と焦りで吐きそうになる。 そのまま、エグチが楽しげに手を前の方へと移動させた。布の上からねちゃねちゃとローションを広げられて不快感が募る。 「や、め……っ!」 「大丈夫、大丈夫。ちゃーんと気持ちよくしてやっから」 エグチが、俺の股間を撫でる。ローションが染み込んでいく。 薬のせいで脳みそまで馬鹿になっているんだろうか。俺の気持ちとは裏腹に、物理的な刺激を与えられたそこは徐々に固くなっていく。 自分の意思とは正反対に身体が反応してしまって、信じられなかった。 「もうこんなんにしてんの。しょうがねえなあ」 「ちがっ……」 「ねえ、脱がしていい?」 嫌だ。助けて。 「さ、く……ら……」 なぜかその時、咄嗟に思いついたのは佐倉の顔だった。 佐倉のアルバイト、このままじゃバックレることになってしまう。怒るだろうな。もしかしたら俺が来ないことに気づいて、探しに来てくれないかな。 望みのない希望を思い描いたけれど、それはすぐさまに萎んで消えた。そんなわけないだろう、俺の馬鹿。 「あ?サクラ?なんだよ、彼女の名前か?」 「……っ」 「こういう時に名前出すのって、大体好きなやつの名前なんだよね。……いいじゃん、燃えてきた」 エグチが冷たい笑いを浮かべながら、俺の顎に手をやった。無理矢理エグチの方を向かされる。怖くてどうにかなりそうだった。 「ねえ、さっきの名前、もう一回言ってよ」 いやだ。ゆるゆると首を振る。するとエグチの手にぎゅっと力が入るのが分かった。口だけが動いて「言えよ」と強いているのがわかる。 身の危険を感じて、とうとう俺は声に出してしまった。 「さ、佐倉……」 「ん、良い子。じゃあ俺のこと佐倉って呼んで。続けるから」 暴れたいのに暴れられない。頭がおかしくなりそうだ。まともな判断力さえ失いつつある俺は、 その後、何回も佐倉、佐倉、と名前を呼ぶ。 ベッドサイドで俺のスマートフォンが鳴っていた。佐倉だろうか。手を伸ばしてみるけれど、その手はやんわりとエグチに制された。ベルトを外しているような、カチャカチャという金属音が耳を劈く。 やっとの思いで瞬きをすると、いつの間にか浮かんでいた涙がこぼれた。

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