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第8話:ぬるい麦茶
今週泊まりに来ないかと唐草壮太に言われた。
俺はまだこの間のキスを忘れられていない、どころかとても意識している。
けどアイツは俺のことを好きなのかどうかわからないし、俺も自分の気持ちに惑わされている。
こんなぐだぐだな状態でアイツとお泊りなんてどうかしてるぜ…。
「おーい。黒木。こっちだこっち」
ラフなTシャツにひざ丈のズボンを履いた唐草壮太が一泊二日分の荷物を持った俺を見て誘導していく。
初めていく奴の家に緊張が走り、ジリジリと焼いてくる太陽に頭がぼんやりしてくる。
俺は何をしているんだ…。
唐草壮太の家は一軒家で、俺の住んでいるアパートと違って冷房も効いていて中々に裕福な中流家庭の家だという印象だった。
玄関もスッキリとしており、少し洋風建築の家はフローリングの床が眩しい。
部屋まで行って荷物を置くと唐草の母親が麦茶を持って挨拶にきてくれた。
「黒木くんね~。遊びに来てくれてありがとう。この子友達を今まで家に連れてきたことなかったから珍しくて、お母さん驚いたわ~」
「母さんそれはいいよ!」
「も~だって壮ちゃんいつもゲームやってて学校の友達の話だってあまりしないじゃない」
「いいからもう出てってくれよ!」
「ふふっ、じゃあ黒木くんゆっくりしていってね。夕飯はお母さん張りきっちゃうから」
年若い母親で笑顔でペラペラと話し、壮太とよく似ているなぁと思った。
学校でもこいつは調子のいいやつでペラペラとよくしゃべる。
母親似なんだなと思い、笑みがこぼれる。
ドアがバタンと閉まり、二人っきりになると唐草壮太が俺に謝罪をしてきた。
「ごめん。俺の家、いつもあんな感じなんだ。騒がしいよな」
「いや、構わない。楽しい家でいいんじゃねーの?」
「そうか?とりあえずゲームでもして遊ぼうぜ」
そういうと唐草は笑顔で先ほど母親が持ってきた麦茶を一気飲みし、積んであるゲームソフトを眺めている。
普通の友達みたいな雰囲気で、これでも悪くないと思った。
「これこれ、二人でプレイできるんだ。やってみようぜ黒木」
「俺、ゲームなんてやったことないぞ?」
「え?まじか?じゃあ俺が教えてやるよ」
唐草がコントローラーを渡してきて操作の仕方を教えてくる。
奴の生暖かい手が俺の手に当たるとドキッとして強張ってしまう。
説明が頭に入らない。どうしよう。
「まぁ実践あるのみだな!やってみようぜ」
「あ、ああ」
プレイするゲームはテレビのCMで見た事あるようなやつで、敵を倒して次のステージへ進むやつだった。
俺は隣に座ってプレイする唐草を意識してしまって余計にしどろもどろで呆気なく敵に倒されてしまう。
「おいおい。黒木~~~何やってんだよ~~~まぁ、仕方ねぇか」
「すまない…」
「あれ?お前、顔が真っ赤だぞ?」
「えっ!?あっ」
唐草が俺の顔を見て驚いた表情で、俺も思わず顔をしかめてしまう。
そんなしかめた俺の顔を見て唐草が手でそっと俺の頬を触る。
「この前…」
「……あ」
「花火の時、ごめん」
真面目な顔をした唐草が俺の顔を見て手に頬を当てたまま話しはじめる。
俺は心臓がバクバクしてどうにかなってしまいそうだ。
「なんか俺、変だよな。黒木のこと見てたら何であんなことしたんだろうって」
「……後悔してるのか?」
「ううん。気づいたんだ。俺、お前のこと好きなんだって」
「……っ……」
「だからあんなことする前に気持ちに気づきたかった」
そう言う唐草は眼を伏せて俺から少し離れた。
手も頬から離れ、ゲームのBGMだけが静かに部屋に流れている。
「俺もお前が好きだ」
「えっ…」
「なんで俺たち、付き合ってんだろうって思ってたけど。今更だよな」
「は、はは……そうだな…俺たち付き合ってたんだ」
手で顔を覆い、笑う唐草は耳が赤くなっていた。
俺はそんな唐草を見て無性に可愛いく思い、咄嗟に口が滑った。
「壮太って呼んでも、いいか?」
「あ、ああ。じゃあ俺も、司って呼んでも…いいか?」
「なんか笑えて来るな。これ。今まで俺たち何やってたんだろうって思う」
今までモヤモヤしていた感情がみんな清算されたようでスッキリした気持ちだ。
それは壮太も同じようで、まだ耳は赤いけど笑顔でいる。
「なぁ、司。やり直そうか」
「何を…って…ぁっ…」
壮太が距離をつめてきて手を重ねられ、触れるだけのキスをされる。
俺は咄嗟に反応できず近い壮太の顔にドキッとして時間が止まったように見えた。
「…じゃあこれからは俺たちは正真正銘の恋人同士だな!」
唇を話すと笑顔で壮太が話す。
俺は笑いながら頷き、麦茶へ手を伸ばして飲むと、もうぬるくなっていた。
おわり
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お泊まり会はまだまだ続く…。
忘れてはいけない。これは一泊二日のお泊まり会だということを…!!!
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