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第6話
「――――― あ゛、っ、あっ!」
治療が終わると、またいつものように組み敷かれた。
が、その夜に与えられた快楽は、暴力的で、拷問に等しかった。
果てても果てても、決して解放されない。
泣きわめいたセージが必死に蹴り倒そうとしても、シダレの身体はびくともしなかった。それどころか、男は暗がりの中で獣のような愉悦の笑みを浮かべる。
「暴れるなと言っただろう、じゃじゃ馬が」
容赦なく両手を縛り上げられたとき、さすがにセージも「なんで!?」と掠れた声で訊ねた。
こんな仕打ちをされる覚えはないっ、と目で訴えた。
「お前には、俺の名前を呼ぶことに慣れてもらう」
「なにをっ、言って…っ」
―――意味が分からない。
なぜ、シダレの名前を呼ぶ必要があるのか……!
しかし、拒否すればするほど愛撫は容赦なく強まり、そのたびに媚薬に火をつけられたような強い快楽が襲いかかる。
「あ、いやだっ、…っ、あああああっ!!」
拒むことは許されない。拒まなくても解放してもらえない。
いつもより激しく、セージの身体の隅々まで「シダレ」の名前を刻み込むような荒々しい情事に、意識は朦朧としていった。
「やっ、もう……解放、してっ、」
許してほしいと、涙が止まらない。
心が折れそうになる中、シダレの低く抗いようのない声が耳元を打つ。
「明日から、ここで暮らしてもらう。荷物をまとめて来い」
それは、決定事項だった。
ずっと居館への移住を頑なに拒み続けてきたセージだが、今日の騒ぎが決定打となった。
この男はもう、セージを自分の目の届かない場所に置くつもりはないのだ。
「戦いが終われば自由になれると思っていたのか?」
「……っ」
「かわいい奴だな。お前だけは連れ帰る」
(なんで……解放してくれないんですか?)
……苦しくて、涙が止まらない。
俺があなたに何かを期待したり、要求をしたことは一度もない。
ただ静かに、ささやかな日常が戻ってくる日を願っていただけで……。
「恨むなら、先に我が国に戦いを仕掛けてきたお前たちの、無能な王を恨め」
(戦い…、王…?)
将軍としての男の言葉は冷酷な真理かもしれない。しかし、セージは王族でも貴族でもない。ニィル村で農夫をしていた村人だ。
『ここの暮らしも、べつに悪くないだろ』
『兵士のおじさんが飴玉くれたんだ』
『争いが終われば、どうせ俺らは故郷に帰るんだ』
―――みんなが、言っていた。
そうだと、俺も信じていた。
知らないうちに始まった争いなんだから、知らないうちに終わる――そう思っていた。
(このまま俺は、お気に入りの一つ…として……)
それだけの理由で自分だけが解放されず、一生この男の愛玩動物として生きるというのか。
(いやだっ、冗談じゃない……っ)
このままでは、本当にシダレの国に連れて行かれる。
「セージ。大人しくしていろ」
そんな囁きをシダレの腕の中で聞きながら、逃げるなら今しかないと……セージは重い決断をくだした。
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