4 / 5
第4話
「おれはもっちゅりんを食べる」
京一郎はまっすぐな瞳で決意を口にした。
モネは何か言いたげな表情で、外出の支度を始めた京一郎を見つめていたが、
「ぼくも行く」
と、腰を上げた。
「お前ももっちゅりんが気になるのか?
猫のくせに生意気だな」
モネは上機嫌な京一郎を見下ろし、小さなため息をついた。
車で5分ほどのところにあるショッピングモールを二人は訪れた。
浮足立ち、歩調の早まる京一郎を、モネはいつものゆったりとしたペースで追いかけた。
平日なのもあり、人はそこまで多くない。
モネはフードコートにあるミスドの入り口で立ち尽くす京一郎に追いついた。
京一郎はモネを振り返ると、
「モネ……
もっちゅりんが……ない」
愕然とした表情で言った。
モネがドーナツの並んだ棚に目を向けると、「もっちゅりん本日分完売」の文字が目に入った。
「そうだろうね」
「なんで?!
なんなの? もっちゅりんて?!」
「ドーナツ」
つかみかからんばかりの勢いで言う京一郎に、モネは淡々と返す。
がっくりと肩を落とし、今日はもっちゅりんの口だった……。おれはこの口をどうすれば……とぶつぶつと京一郎は嘆く。
「すごい人気だから、予約とかしないと買えないみたいだよ」
うなだれた京一郎のつむじに向かってモネは言った。
「おま……それ知ってるなら、先に言えよ」
「言っても聞かないじゃん。
自分の目で確かめるまではわからないとかなんとか言うでしょ」
京一郎は顔を上げる。
付き合いは長くないはずなのに、己の挙動を言い当てられ、憮然とする。
モネは後から来た老夫婦に先を譲るように、京一郎を引き寄せ、道を空けた。
「せっかく来たんだし、ぼくたちも何か食べていこうよ」
二人でショーケースを覗き込んでいる老夫婦を目で追いながら、モネは言った。
「そうだな! ロイヤルミルクティー飲み放題しよう!」
ミルクティーに合うドーナツを探すぞ!とトングをにぎりしめた京一郎を見て、モネは表情をゆるめ、トレーを持って隣に並んだ。
ともだちにシェアしよう!

