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第28話※

 雅に手を引かれるまま入ったホテルの一室。  ドアを閉めると、あっという間に濃密なアルファの匂いが充満した。  その匂いだけで、雅の興奮が伝わる。 「泰斗さん」 「な、んだよ」 「僕のお手伝いを気に入ってくれたなら、発情期も僕と過ごしてくれませんか」 「……だめだって」  匂いが濃い。  俺の長く眠っていたオメガの本能を呼び覚ます。 「ん、あっ……」 「泰斗さんっ!」  俺はドアに押し付けられるかたちで激しいキスを交わした。  熱い舌が口内に差し入れられ、唾液を注ぎこまれる。  まるで彼の匂いをしみつけるようなキスだった。 「ぁあっ、はぁ……」  腰が抜け、床に尻をつく。 「はぁっ……」 「泰斗さん、立って」  雅は立ったまま、俺を見下ろす。 「ベッドに行きましょう」  俺はゆるゆると首を振る。 「も、もぅ、無理……立てな……」 「泰斗さん……!」  頬を撫でられる。  そして何度も頬にちゅ、ちゅと軽いキスが降って来る。  それから雅は至近距離で俺を見つめる。 「あなたはキスだけで、こんなになっちゃうんですか」  かっと頬が赤くなるのがわかった。  俺は年上として平然とした声音を作り、雅の股間に手をやる。 「お前も人のこと言えないだろうが」  そこはもうぱんぱんに硬くなっている。 「……」  雅は一度ふっと笑った。  そしてゆっくりと俺の前に膝を折ると、俺の両方の乳首をつまんだ。 「ひぅっ……!」  ぴりりと甘い刺激が体を駆け抜ける。 「み、みや、びぃ……」 「泰斗さんの乳首、やらしいですね」  雅はそれを捻り、指の腹で押し込む。 「シャツの上からでもわかりますね」 「い、いやぁっ……!」 「ひとりでするとき、こっちもいじるんですか」 「んなわけっ……」 「じゃあ、これは僕が相手だからよろこんでくれているってことですか」  とんとんと一定のリズムで弾かれる。  俺は体を捩るが、雅は逃がさない。  俺は床に倒れ込み、雅がその上に馬乗りになった。 「あぁっ……」  思わず声が出る。  両方のそれを指先で転がされると、声はいっそう激しくなる。 「……あっ!」  体は俺の意志と関係なく跳ねる。  雅は俺の反応をじっと見つめている。  俺はすがるように雅に手を伸ばした。 「雅、その目、やめろよ」 「……僕、どんな目をしていますか」 「……」  わからない。  ただ、いつもの雅の目ではない。  どこか冷たくて、どこか悲し気で。  答えられずにいると、雅は俺のシャツのボタンを外しはじめた。 「雅……!」 「泰斗さんが、いやらしいのが悪いんです」  シャツの前を開かれ、下に着ていた薄いタンクトップをまくり上げられる。  露わになったそれは、薄く色づき、見たことがないくらいにピンと立ち上がっている。 「……かわいいですね」 「あ……んんっ……!」  雅がそこにじかに触れると、俺の体はまた快楽に跳ねる。  そこは「もっと」とねだるようにさらにぷっくりと主張する。   雅はそれをあやすように舌で包む。  甘い感覚が生まれ、背筋を辿って腹の奥に響く。 「んっ……!」  歯を食いしばって快楽の波をやりすごす。 「はぁっ、はっ……」 「気持ちいいですか?」  ちゅ、と音を立てて吸い上げられる。 「んんっ!」  俺はまたこみ上げてくるものに耐える。  骨盤の内側がむずむずする。  股間の勃ちあがったそれからはだらだらと先走りがあふれる。  自分の体が、自分のものでないようだった。  雅は乳首をたっぷりと舐めたあと、やっと離れた。  俺のそれは雅の唾液でぬらぬらと妖しく光っている。  浅い呼吸を繰り返す俺を見て、彼は小さく笑んだ。 「泰斗さん、敏感なんですね」 「はぁっ……は……ぁ」 「乳首、好きなんですか?」 「雅……」 「もっといじりましょうか」  指先で胸の先をいじられる。  たまらず、俺は言う。 「も、もう、いい……やめろって……」 「泰斗さん、僕は――」  彼はさらに指の動きを早くする。  押し込み、摘まみ、弾く。  俺は激しく首を振った。  だめだ、このままでは。 「あああっ……!」 「泰斗さんがイクところが見たいです」  雅が身もだえる俺を見下ろしている。  その目と目が合うと、それまで我慢していたものがはじけ飛んだ。 「ああっああああ!」  目の前が真っ白になる。 「ぁあ……?」  股間にあたたかいものを感じる。  見ると、スーツのそこにシミがあった。  射精させられたのだ。  俺は呆然として、そのシミが広がっていくのを見つめた。  雅はふっと笑う。 「泰斗さんって、乳首だけでイけるんですね」 「……あ、ぁ……」 「気持ちよかったですか? 乳首、おかわりしますか?」  冷静な雅と、乱れきった俺。  雅は首元までシャツのボタンを閉めたままだ。  それが無性に、くやしい。  俺は雅の肩をぐいっと押した。 「べらべらとうるさいぞ。お前もさっさと出せって……」  そう言って雅の股間に手を伸ばすが、その手はそこに届く前に掴まれた。 「だめです」 「なんで……」  雅は俺のベルトに手をかけ、あっというまに俺のズボンと下着を脱がせた。 「雅、ま、待てって……さすがに……」  嫌な予感がした。  しかし、雅は止まらない。  彼は脱力した俺の両足を大きく開かせる。 「待てって、なぁ」 「あれ……すごいな。もうこんなに。……期待していました?」  雅が俺の尻穴に二本の指で軽く触れる。  そして、その指を俺の目の前に見せつける。  彼の指には粘性の液体がまとわりついていた。  指二本の間を銀の糸がつなぎ、ゆっくりとたわんでぷつりと切れる。  発情期ではないはずなのに、俺のそこは濡れそぼっていた。 「……っ」  俺は唾を飲み込む。  雅は妖しく笑う。  ゆっくりと、彼の指が一本、二本と差し込まれる。  他人を受け入れることなどはじめてのはずなのに。 「あ、ひぁ、ああっ……」 「すごい……やわらかくて、あたたかくて……」  俺のそこは彼の指をたやすく飲み込んだ。 「あっ……ああっ……あ、あ……!」 「奥まで入れますよ」 「ああっ!」  彼の指が奥に辿りついたとき、背筋をなにかが這いあがり、俺はのけぞった。  熱い。  彼の指を咥えこんでいるそこが。  そして、もっと、もっと奥――腹の奥が。 「動かしますね」  彼の指が抜き差しをはじめる。  くちゅ、くちゅ、と淫靡な音が部屋に響く。 「ああっ、ああ。ああああ!」  俺はめちゃくちゃに首を振る。  逃げ出したいのに、足に力が入らない。  それなのに、腰は勝手に浮き、彼の指をさらに奥へと招き入れようとする。  雅は俺の腰を押さえつける。  途端、快楽が大きくなる。  快楽は小さな泡のようだった。  それは雅が触れているところから生まれて、背筋を通って脳髄に集まっていく。  体が震える。  雅がささやく。 「イッていいですよ」 「んっ……ぐっ、はあ、あぁ」 「後ろの穴だけでイクところも見せてください」  これが、イクということなのか。  俺は雅にしがみつく。 「……ぁかっ……」  小さな泡が集まって、集まって――はじけた。  俺は真っ白な世界に飛んだ。  それは数秒だったのか、もしくはもっと短かったのか。 「はぁっ……はぁっ……」  荒い呼吸。  やかましいくらいの心臓の音。  雅が俺を見下ろしている。  彼の股間のそれはズボンの上からでもわかるくらいに屹立している。 「雅……」  もっとほしい。喉が鳴る。体の奥が、熱い。 「泰斗さん……」 「……入れてくれ」  彼の目が揺れる。 「……いいんですか」  ああ、ほんとうはだめなのに。  これ以上は、もう番ごっこと呼べない。  この先に踏み込んだら、俺はもう雅を手放せない気がする。  うなじに残る歯型が、うずく。  雅をこんな歯型で縛ってはいけない。  雅には、もっといい番を選ぶ権利がある。  オメガ恐怖症を治して、そして幸せになって――。  だめだ。だめなのに――。  俺は足を抱えた。雅に見せつけるように。 「はやく……」 「……僕は――」  言葉を飲み込んで、雅は俺の尻穴に凶悪なそれを宛がった。

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