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笑った!

これではどちらが義兄かわからない。 「ありがとう。レアは優しいんだね」 「嫌だって思うことを言っただけなのに優しいって言うなんて変だ」 「ち、ちっとも変じゃないよ。レアはすごく優しいし、た、頼りになる。さっきも、助けてくれたでしょ」  回帰前のレアを知っているからか心のどこかではまだ少しだけ怖いと思う気持ちがあった。  けれど毎日接している彼は少しも怖いところなんてなくて、まるで大きな子供みたいに純粋で素直。だからこそ怖がりのリューリュでも笑いかけることができる。 「リューリュを助けるのは俺がそうしたいと感じたからだ」 「ふふ、頼もしいね」  頼りになる義弟が可愛らしくて笑みをこぼす。 「……そっちのほうがいい」  レアの言葉の意味がわからなくて首を傾げた。 「リューリュは笑っている方がいい」 「そ、そうかな……」  気恥ずかしくなってうつむくと、レアが床に落ちた本を拾い上げながら口を開いた。 「そうだよ。だからリューリュが笑えるようにいつでも俺が守ってあげる。その代わりリューリュは俺だけを頼ってくれないと嫌だよ」  幸せや好き、それから嫌という感情を覚えたレアは、こうやって素直に気持ちを伝えてくれるようになった。  表情は常に真顔でも、声音に含まれるリューリュへの親しみは隠されていないから、彼の気持ちがちゃんとわかる。 「なにかあったら、一番最初にレアを頼るよ」 「うん。約束だからね」  ふとレアが微かに笑った気がして、彼の表情に目が釘付けになった。 「い、いま笑った!?」  思わずレアの頬に両手を添えて、表情をしっかりと確認するために顔を近づけた。  綺麗な赤い瞳が大きく見開かれて、そこに真剣な表情を浮かべたリューリュが映っている。 「笑ったよね!わ、わぁ!レアが笑った!」  嬉しすぎて興奮してしまい頬を掴んだまま騒ぐ。  そんなリューリュにされるがままになっていたレアが、ふにゃりと表情を崩して目尻をほんのりと赤く染めた。 「リューリュ落ち着いて……」 「へ、あ……あ、あぁ!ご、ごご、ごめん!」  慌てて離れると本棚の影に隠れる。  自分のしたことを思い出して恥ずかしくなったリューリュは、本棚の裏から出ることができず羞恥心で顔を真っ赤にさせた。 ──いい大人が義弟にあんなことをするなんて恥ずかしすぎる!  本棚の裏から出てこないリューリュの方にゆっくりと歩いてきたレアは、うずくまっているリューリュを見下ろしながらクスリと笑みをこぼした。 「リューリュは可愛いね」 「や、やめてぇ~……」  引きこもり過ぎて人との距離感がおかしくなってしまっている気がする。 (反省反省反省!)  気を取り直して立ち上がると、レアが目の前に手を差し出してきた。 「な、なに?」 「リハビリ」  リューリュの怖がりを治すのに付き合ってくれる優しい義弟に感謝の気持ちが湧いてきた。 「ありがとう。お、俺、頑張って治すから」 「頑張らなくていい。俺のことだけ怖がらなければそれでいいから」 「う、うん」  今はそれでも充分な進歩だろう。  いつかは堂々と人前に立てるようになりたい。 (レアは優しいからこう言ってくれるけど、自分でももっと頑張らないと!)  決意を改めたリューリュは、レアの手を取ると一緒に広い書庫を見て回ることにした。

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