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第19話

 手足は思うように動かず、傷は熱を帯びている。韶華(しょうか)は気怠い意識の中ぼんやりと考えていた。  家の再建にあの若者の力をあてにしたのが、いけなかったかな――  彼には力がありそうだから、寝ずに二日かければようやくまともな寝具で寝られると期待していたのだけれど。  もうしばらくは野ざらしのまま、おいでといっておいて、あんな瓦礫の山では星郎も落ち着かないだろう。それに、屋根のない家なんて、来たがるかどうか……  肌の焼けたような痛みが少しずつ思い出され、彷徨っていた意識がふと激しい苦痛をとらえつつあった。 「まだ、寝ていて……」  そのあわい微睡みの中に融けていく、声……  傷ついた手足を抱き寄せる優しい手つきと、身体を抱きすくめるその肌のあたたかさ……  こめかみに触れるかじかんだ冷たい唇。 「……名前をあててと、言ったのに」  か細い声が震えていた。  ……星郎?  はりついた瞼をおしあげたさきに、無憂樹の花の輝きがある。吉祥の象徴、美しい痣。韶華は自然とそれに手をのばしていた。  名前をあてれば従うと、彼は言ったのだった。それがいやだから、こうして名前をつけたのだよ。 「君に、……言うことを聞かせたいわけじゃ、ないよ」  力ない指先が頬に届かず落ちていく。それを咄嗟に捕まえて、星郎はきつく目をつむった。  皮膚を裂くむち打ちの傷、ただれた腕の、その彼岸花の火傷痕を、まるで裂け折れた痛々しい枝にでも触れるように撫でながら、星郎は胸にもたれて眠り込む韶華をほんの少しの間眺めていた。

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