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第4話

 シャノン……あぁ、なんと素敵な響きなのだろう。  sha-non.……シャノン。  天使というのがこの世にいるならば、それはシャノンだ。彼に白い翼が生えたとしても、自分は疑問を抱かないだろう。  寝巻き姿のフェリックスは、自室の椅子に腰掛けて、ワインとシャノンに酔いしれていた。  その時。扉が数回ノックされた。  来たか。とフェリックスは来客を出迎える。そこにいたのは、同じく寝巻き姿のシャノンだった。 「1分遅れだな」フェリックスはシャノンの顔をじっと見つめる。「君らしくない」  シャノンは時刻にも厳格な男であった。  例えば8時に自室に来いと言えば、彼は1分の狂いもなく来る。それなのに、今日は何故か遅れた。 「申し訳ございません……」  詫びるシャノンの頬は赤かった。心なしか、瞳が潤んでいるようにも見える。  素敵な予感に心を弾ませながら、「まぁ、入りなさい」とシャノンを迎え入れた。  やはり、愛しい者のあられもない姿というのは可愛らしい。  寝巻きからチラリと覗く鎖骨は、ゆるやかなカーブを描いている。薄手の生地からわずかに浮き出ているのは、胸の頂の輪郭だ。  あぁ、「夜なのだから、君も寝巻きのままで来い」と命じて良かった! 「早速始めようか」  フェリックスは鍵を見せるように掲げながら、にこやかに告げた。  今夜、シャノンを呼んだのは、貞操具と陰茎の洗浄をするためだ。  毎日湯浴みをしている彼だが、貞操具の中まではしっかり洗えない。そのため、主人であるフェリックスが、定期的に拭いて綺麗にしてやる必要がある。  南京錠を解いてやるために、フェリックスは彼の前で跪いた。 「いや……!」  するとシャノンが声を上げた。小さかったものの、はっきりとした拒否を感じられた。 「ん? どうした?」  シャノンの顔を覗き込む。  彼は眉尻を下げ、口元を引き攣らせている。宝石のような瞳には、怯えが表れていた。 「い、いえ……っ」  声を震わせながら、シャノンは寝巻きのボタンを外した。  「洗浄の邪魔だから、寝巻き以外は何も着て来るな」とも命じたため、すぐに裸体が露わとなる。引き締まった肉体と、銀に輝くアクセサリーが官能的だ。  南京錠に鍵を差し込み、クルッと回した瞬間。ペニスを覆っている部品が、グン。と持ち上がった。 (おやおや、やはりか)  予感の的中に気持ちを抑えながら、フェリックスは貞操具を取り払った。 「おいおい、一体どうしたんだ」  声を暗く保ちながら、フェリックスはシャノンをジロリと睨んだ。 「洗浄中に強張らせるのは仕方がない。それなりに擦れば勃つのはしょうがないからな……だが、一切触れていないにも関わらず、勃起するのはどういうことだ」  「も、申し訳ございません」と絞り出すような声を上げるシャノン。しかし彼の下は怒張したままだ。  天を穿つようなソレには、ところどころ血管が浮き出ていて、赤い血を巡らせている。ぶら下がる袋は丸々としていて、限界が近いのは誰の目から見ても明らかだろう。 「まさかとは思うが……誰かに欲情でもしたか?」  そう訊ねると、シャノンは目を伏せた。まったく、分かりやすい男め。 「馬鹿な。従僕ともあろう者が」  子犬のように震えるシャノンの姿が面白いので、少し責め立ててやった。  返す言葉も見つからないのか、顔を青ざめさせたまま黙ってしまった。しかし、陰茎の方は少しも萎えず、強張り続けている。 「はぁ~~……ぁ」  それはそれは深いため息を、シャノンの性器にわざとかけてやる。  気持ち良かったのだろう。直立していた彼は、少しだけ腰を引いて膝を震わせた。しかし顔は恐怖で凍り付いている。  立ち上がったフェリックスは、シャノンの表情と肉体の落差に耐え切れず、背を向けて笑みをこぼした。  「フェリックス様」主人が喜んでいると知らないシャノンは、いっそう声を震わせた。 「どうかお許しください。もう……今後は、このようなことは——」 「いや、もういい」  再び体を回転させたフェリックスは、シャノンの肩を優しく叩いた。 「こうなったのには私にも責任がある。これほど君が欲深いとは思っていなかったんだ。まさか劣情を抱くなんて」  次第に自己嫌悪を帯びる顔。虐めるのはこれくらいにしておくか。とフェリックスは椅子に深く腰を下ろした。 「仕方ないな……手を貸してやろう」  左手をシャノンへ差し伸べながら続ける。 「私が管理している以上、君の性処理も私の仕事だ。しかし手を動かすのは面倒でね……仕方ないから手だけ貸してやる」  いつも指示は一度だけで理解するシャノンだが……この変態的な指示だけは理解できなかったらしい。  「つまりだな」鋭い視線で従僕を捉えながら続けた。「私の手にペニスを擦り付けて射精しろと言っているんだ」  一拍置いて、シャノンが「は……!?」と声を上げながら、耳まで赤くさせた。 「む、無理です! フェリックス様のお手を穢すなんて、私には——」 「それでは私が困るんだ!」  シャノンの言葉を怒鳴り声で(さえぎ)る。 「このままの君を帰せない。……今この瞬間だって、君は興奮を隠せないでいる。そのような君がまた、欲情した誰かに会うことを考えると——」  もう虐めないと決めたはずのフェリックスは、またシャノンを責めた。  シャノンが何かを我慢するように唇を噛み締めたのを見て、「いや」と頬を掻いた。 「君を信用していない訳ではない。だが安心したいんだ。君がランガスター家を穢すようなことは絶対にしないと分かっている、だが……この場で欲望を発散して、私を安心させて欲しいんだ」  ランガスター家の名前を出してまでの頼み。それをシャノンが断るわけがなかった。

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