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第5話

 シャノンはペニスに触れることさえ禁じられている。そのため、定期的な洗浄の際は、フェリックに拭いてもらっている。  軽く触れられるだけで、シャノンは自身を起立させてしまう。  『仕方ない。擦れば勃ってしまうのは生理現象だからな』と笑って許してくれた主人は、いつもこう付け加えた。 『だがなシャノン。触れていないのに勃ってしまうのは駄目だ。従僕である君は、常に清らかでなくてはならない』  ……それなのに、シャノンは欲情してしまった。  メイドのリスティナに浅はかな想いを抱いたあの日から、体の熱は更にひどくなった。彼女とすれ違うだけで下が強張る。毎夜のように、クッションを用いての自慰に耽ってしまう。  確かに自分は、いつかランガスター家の顔に泥を塗るようなことをするかもしれない。それならば今、フェリックス様の言う通り、熱を発散させるしかない。  鋼のようにしなやかな体は汗ばんでいた。主人の気分を害したと自覚しているための冷や汗。そして、射精への期待による脂汗。  目前に差し出されたフェリックスの手は、剣技を学んでいる彼らしい手だ。 「っ……お、お願い……いたします」  今まで感じたことのない羞恥に襲われながら、シャノンは猛りをそっと乗せた。 「っ……は……」  銀とは違う。人間らしい柔らかさと温かさに、自然と溜息が漏れた。  遠慮がちに性器を擦り付ける。許可されているとはいえ、他人の手……敬愛するフェリックスの手で慰めるのは気が引けた。 「……っ」  しかし理性は、早々に消えてしまった。  従僕になってからというもの、直接的な刺激はただの拷問と化していた。射精というゴールに辿り着けない摩擦は、殴る蹴るよりも残酷だった。  しかし今回に限っては射精を許されているのだ。この前提が、シャノンを野生的にした。 (……いけない。フェリックス様にこれ以上の時間をかけさせては……!)  体が溶けるような悦びにもっと浸りたい。その欲望を抑え込み、シャノンは力を込め始めた。 (おっと、そうはさせるか)  フェリックスは手を少し動かし、力を逃す。これほど素晴らしい状況を生み出したのだ。彼のいやらしい姿をもっと拝まなければ損というもの。 「っ……ふっ……」  口の端から声を漏れ出させてしまう。 (イかないと、早く、イかないと……!)  射精へ至るための刺激を求める。控えめに腰を揺り動かしていたはずのシャノンは、次第に大胆になってゆく。 (イきたい……ッ!)  若い猛りを振るう腰は愚直だ。痛みを感じるほど強張り、ヨダレを垂らしている。 (……あぁ、なんという光景だろう!)  フェリックスはシャノンの姿を目に焼き付けようと躍起になっていた。  麗しい男が性欲に敗北し、休むことなく腰を動かしている。手に感じる性器の熱は鉄のようで、それを振りかざす彼は凶悪犯のようにも見える。  なんと情けないのだろう! 誰の目も(はばか)らず交尾するオス犬……いや、それ以下ではないか! 「ふっ……ふ、ぅっ……!」  うめき声に似た喘ぎに、興奮を下半身に宿してしまう。フェリックスはさりげなく足を組んだ。 「シャノン。ひとつ聞こうか」  両目を固く(つむ)っていたシャノンが、少しだけまぶたを開けた。 「君は一体、誰に欲情した?」 「…………」 「言うんだ」 「……メイドの……ッ、リスティナ。さんにです」  あぁ、あのチビか。 「ん? 誰だって?」 「リスティナ……さんッ、です」 「何だって?」 「リスティナさんに……っ、欲情、しました……!」  ここまで言わせて、ようやくフェリックスは満足した。 「そうかリスティナか。どうしてあの子に?」 「……初めて会った時から……はぁ、っ……気になって、いたから……ん、っ、だと、思います……」  「ふーん」と生返事をしながら、フェリックスは頭のてっぺんが重くなるのを感じた。  あの小賢しい雌猫め。どうせ色目を使ったのだろう。そうでもしなければ、この真面目なシャノンを魅了するわけがない。 「声、我慢するな。君の性欲をすべてぶつけるんだ」  手のひらを丸め、熱の塊をキュッと握った。 「あぁ……ッ!」  シャノンの視界が一瞬だけ揺れた。  待ち望んでいた刺激。それを性器が敏感に受け止め、シャノンの脳をジリジリと焼く。  イきたい、イきたい、イきたい!  もはやシャノンはペニスの奴隷になっていた。ペニスを悦ばせるためなら、どのような恥だって甘んじて受け入れる。 「はぁっ、はぁ、はぁ、っは……!」  手で形作られた筒。その中へ、陰茎を根元まで食い込ませる。 「いいぞ、シャノン」  カウパー線液が手首を伝うのを感じながら、フェリックスは声を上擦らせる。 「とても上手だ。限界が来たら言うんだぞ?」 「は、はぃいっ……!」  腰を打ちつけるたび、鋭い快感に包まれる。激しい動きに揺れる睾丸が、キュッと迫り上がるのを感じた。 「あぁっ、イ……くっ! イきますっ……!」 「あぁ、いいぞ。そのまま全部吐き出してしまえ」  目尻にうっすらと涙を湛えたシェノンは、「ふぅっ」と息を鋭く吸い込んだ。  次の瞬間。熱いモノが内部を遡った。  グンッ! と若々しい猛りが持ち上がり、白濁を噴き上げた。 「おぉ……っ!」  ビクッ。ビクッ。と同じ動きを繰り返す。その度に、濃縮された精が吐き出された。 「お……ぉ、っ……お……!」  ふらふらとしながら、シャノンは情けない声を上げる。  とろけきった表情を隠さない、このシャノンという雄は……この瞬間だけは、地球上で最も哀れな生き物になっていた。  天国に至ったシャノンは、その場にへたり込んだ。 「頑張ったな」  自分の横にしゃがんだフェリックスに、そっと抱かれる。  寝巻きにも忍ばされた香水が、絶頂直後のシャノンに深く印象付いた。 「凄い精の臭いだ。君にとって、禁欲は辛いものだったんだね」 「フェリックス様……」  主人を呼ぶ声の甘ったるさに、シャノン自身ひどく驚いた。しかし体の重だるさに、シャノンは彼のされるがままになる。 「シャノン。良いことを教えてあげよう」  耳元で囁かれ、全身がゾクっと震えた。 「従僕のなかには、君のように禁欲に耐えかねてしまう者もいる。そのような彼らが肉欲を晴らすために、ペニスを用いない自慰をするんだ。その方法は——」

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