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第7話

 前の洗浄から一週間が経った頃。再び清めるために、フェリックスはシャノンを自室に呼んだ。 「私はもう、戻れないかもしれません」  入室早々、シャノンが深刻な面持ちで呟いた。  それが性関連のことだとすぐに思い至ったフェリックスは、フゥと息を吐いた。  「どうしたんだ、一体」と詳しく訊ねようとした。  すると突然、シャノンが目の前で跪いた。 「数日前から、私はフェリックス様の助言通り、体を慰めていました」  ほぉ! と嬉々とした声を上げそうになるのを堪え、シャノンの言葉に耳を傾ける。  「私は——」シャノンは頬をカァっと赤く染め、絞り出すような声で続けた。 「初めて自慰をした時、私は……気をやって、しまいました」  フェリックスは目を丸くして、シャノンの頭に視線を浴びせてしまう。  アナルで絶頂に至るには、それなりの訓練が必要だ。それをまさか、一日でやってしまったのか。  一驚している間にも、シャノンは言葉を紡いでゆく。 「どうか、お許しください。快感が忘れられず、私は毎晩、自慰をしてしまうのです。しかも、仕事中にも、そのことが忘れられないのです……!」  確かに、ここ数日の彼は彼らしくなかった。  呼びかけても、ぼおっとしていて、すぐに応じてくれなかったり。時々頬を赤らめ、小さな溜息を吐いたり。  すべて射精を禁じたためによる注意散漫だと思っていたのだが……なるほど、そのような理由があったのか。 「今、私は興奮してしまっています。あの快感そのものに欲情して……貞操具の中を、強張らせてしまっているのです」  上目づかいで『また射精させてください』と求められる。小動物を思わせる瞳に、悪い癖が出てしまう。 「今日は駄目だ」  彼の願いを一蹴すると、シャノンが今にも泣き出しそうな表情を浮かべてしまった。  おぉ、おぉ! 射精できないだけで泣いてしまうのか!  加虐心をおおいにくすぐられ、フェリックスの呼吸に熱いものが混じり始める。 「まだ一週間だろう。それくらい耐えられるようにならないとな」 「……はい」  羞恥の念を纏ったシャノンが、蚊の鳴くような声で頷いた。固く結ばれた口の隙間から、ふぅ、ふぅ。と乱れた呼吸がかすかに聞こえる。  今だ。今しかない。  邪な目的を果たすには絶好の機会だ。  シャノンの肩をポンと叩くと、フェリックスは耳元で囁く。 「まぁでも、よく正直に言えたじゃないか。私は君のその、従順さを好ましく思ってるんだよ。……射精はさせてやれないが、代わりに褒美をくれてやろう」 「ほ、褒美……ですか?」  震わせる肩は熱を帯びている。どうやら、体の芯まで情欲で火照っているようだ。 「あぁ。……きっと、気に入ってくれるだろう」    *** 「あぁっ、おやめください!」  ベッドの上で、シャノンはフェリックスに背を預けるような体勢になっていた。一方の手を腰に回され、もう一方の手で右手首を掴まれている。 「やめてほしいなら、それらしい抵抗でもしたらどうだ」  がら空きの首筋に、熱くて濡れたものが押し当てられた。体がビリビリと甘く痺れて、「ヒッ」と鋭く叫んだ。 「む、無理、です」 「どうしてだ?」 「私は、貴方様の、じ、従僕、だからです」 「それだけか?」  何者をも屈服させるような声に、シャノンは口を閉ざした。 「あっ……あぁっ……」  鼻を鳴らしたフェリックスに、首筋を甘く噛まれ、軽く吸われる。フェリックスの姿はまるで吸血鬼だ。  腰に回されていた手が、滑らかな肌の上を滑り落ちる。  足の付け根に添うように、指を這わせられる。  銀の牢をそっと撫でられ、唯一収容を逃れた性器を、手のひらで包まれた。 「あっ……!」  色づいた玉の袋を軽く握られる。手のひらの上で転がされる。指先でくすぐられる。  放たれずに濃縮された熱が、渦を巻き始める。機能を果たせずにいる男の証から、蜜がツゥと滴った。 「フフ……可愛いヤツ」  その時。シャノンは尻に硬いモノを感じた。 「フェリックス様……っ」 「なんだ?」 「こ……興奮、されてるのですか?」 「あぁ、そうだな。……私は今、お前に欲情している」  頭が真っ白になる。何故。どうして、男の私なんかに。  体の昂りによって、問いは輪郭を失ってゆく。  フェリックスは、事前に用意していた脂の缶に手を伸ばす。適量を指ですくい取ると、そのままシャノンの下半身へと伸ばした。 「シャノン。今から何をするか、教えてやろうか」  右手首を掴んでいた手が離れ、今度は胸に回される。  ピンと強張った蕾を、指の腹で弄ばれる。  柔らかな刺激に夢中になっていると……フェリックスの指が一本、窄まりに這入ってきた。 「ゔぅ……!?」  下品な声を上げたシャノンは、背中を少し逸らした。 「おぉ、毎晩弄っていたのは本当だったんだな」  妙に慣れた手つきでグチュグチュと体内をかき回され、シャノンは情けない声を上げてしまう。綿に包まれたかのような浮遊感に襲われ、目の前がチカチカとくらむ。 「あっ、そこはぁ……ッ!」  前立腺に触れられた瞬間、体が跳ね上がった。フェリックスに抑え込まれながらも、快楽を逃そうと試みる。 「こら、逃げようと——」  指が引き抜かれた直後、 「するんじゃない!」  二本の指が挿入され、ズン。と奥まで突かれた。 「————ッ!!」  視界がぐわんと揺れた。シャノン自身もまだ、指を二本以上挿れたことが無かったからだ。  両足をビンと伸ばし、震わせる。跳ねる呼吸が、この部屋の空気を更に淫靡なものへと変えた。 「おぉ、しっかりと感じているじゃないか。……本当に君は、私を狂わせてくれる」  「いいかい」子どもに言い聞かせるような口調でフェリックスが続ける。 「十分にほぐした後、コイツで君を犯す。それが褒美だよ」  フェリックスの猛りを背に押し付けられる。  シャノンは息を鋭く吸った後、首を横に振った。 「ふ……不浄です、そんなの……!」  従僕としてではなく、一人の青年として拒もうとする。……が、しかし。 「ふぅっ、ふぁ、あっ、あ……!」  快楽の核を容赦なく責め立てられ、シャノンの身体は更に昂ってゆく。 (い、いやだ……! イきたくないっ、イきたくなんか——)  一瞬だけ、熱がさぁっと引いてゆき…… 「あ……あぁぁぁ……ッ!」  腹の奥で爆発した。快感が神経を伝い、全身に巡ってゆく。 「はぁ……っ、はぁっ……」  項垂れたシャノンは、頭を大きな手で撫でられ、「上手にイけたな」と褒められた。  一種の心地よさを感じた自分が、腹の奥底にいるのを感じた。

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