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第8話
「そう怖がることはない」
オーガズムの洗礼を何度も受けたシャノンは、ベッドに押し倒され、フェリックスの顔を見上げた。
ランプの明かりを背に受けているため、顔には影が差している。青みを帯びた黒の瞳は、危険な色合いを見せながら、ギラギラと輝いていた。
寝巻きを脱いだフェリックスの体格は男らしかった。そそり立つ陰茎は獣のようで、獲物を前にして身を昂らせている。
「可愛いヤツ」
そう呟いて目を細めたフェリックの瞳には、艶っぽい青年が映っていた。
とろんと潤んだ瞳に上気した頬。ただ待っている様は子羊のよう。
何ヵ月もかけて調理した結果、非の付けどころがないほど淫らな青年へと成長した。それをようやく食す時が来た。
もう、肉欲を隠す必要もない。今はただ、美しくも淫猥な青年を堪能しようではないか……
「……っ」
丹念にほぐされた不浄の入り口へ、肉の塊を当てられる。指などとは比べ物にならないほどの存在感に、シャノンは目を固く瞑った。
ツプ……と、屹立の切先に、窄まりをこじ開けられる。
「ゔぁ……!」
腸をぐんぐんと押し広げられる。責め立てられた腹は性器と化しており、フェリックスを受け入れてしまう。
根元まで飲み込まされたシャノンは、全身をビクッ、ビクン! と跳ねさせた。
これほど深く挿入されて大丈夫なのか。という不安すらかき消させるほどの衝撃。
表情を律する余裕もなく、処女の喪失に悶えている。
「……ふ、っ」
フェリックスもまた、シャノンの肉体に酔いしれていた。
肉壁にキュウっと吸い付かれる。まるでペニスの形を覚えようとしているかのようだ。防衛本能か、肛門は特に締め付けが強い。むしろそれが、フェリックを悦ばせるとは知らずに。
「こ、こんな……」理不尽だというニュアンスの籠った言葉だった。
「ん?」
「こんな、はずじゃ……!」
「あぁ。そうだろうな? 初めてのセックスなんだろう? それがまさか男とだとは」
はぁ、はぁ。と息を乱すシャノンは、耳元でフェリックスに囁かれた。
「どうせリスティナとヤりたかったんだろ?」
「……ッ!?」
あまりにストレートな言葉に、シャノンは目を見開いた。同時に確信する。リスティナを解雇した理由は、母の危篤ではない。
「ち、ちが——」
「いや、違わないな」
訂正の言葉すら奪われ、シャノンは口をつぐむ。
「君のことだ。どうせ、友達になれれば……なんて、生っちょろいことを考えていたんだろう?」
ズバリ言い当てられ、心臓がドクンと跳ねる。
それすら見透かしているのか、フェリックスが口角を少しだけ上げた。
「君みたいに毎晩マスターベーションに耽る男が我慢なんてできるわけないだろう。この淫乱め」
淀みない言葉がナイフのよう。
「君はあの子を犯したかったんだろ? ほら、こんなふうに——」
「あっ、あぁぁあっ!」
ついに動き出したフェリックス。彼の責めに翻弄され、シャノンは大きく啼いた。
前立腺をゴリゴリと|抉《えぐ》られ、天地が分からなくなるほどの悦びに包まれる。漏れ出る声はいつもより半音ほど高く、媚びるようにねっとりとしていた。
それに合わさるのは、深い繋がりを示す破裂音。
「あ……あぁ、っ! あ……!」
心身ともに甘くとろけさせられる。その中でも唯一認識できたのは、フェリックスの存在だった。
情熱に燃える双眸。
喜悦で歪んだ口元。
漏れ出る吐息に混じる「シャノン」。
汗の臭いに、肌の感触。
ズンッ……と重く突かれる。下品な声を震わせ、背を逸らせた。
「可哀想に、シャノン。君は生涯、女を抱けない。この悦びを知ってしまったからには……ね」
フェリックスは嬉々とした口調で呪いを掛ける。
「まぁ、安心しろ。私が慰めてやる。また体が切なくなったら抱いてやる。ペニスが疼いて、たまらなくなったら——」
「ああぁぁぁぁ……ん、ッ!!」
猛りを強く締め付けられる。
シャノンが何度目か分からない絶頂に至ったのだ。
フェリックスは「はぁ……はぁ……」とグッタリするシャノンの頭に手を回す。整髪料の使われていない髪は、空気を含んでフワリとしていた。
「本当に……素直なヤツめ。心も、体も……」
フェリックスの言葉には、今にも弾けそうな熱が込められていた。
全身を包み込まれるように抱かれたシャノンは、終わりが間もなく訪れることを悟った。
「……ッ」
フェリックスが小さく唸った。それと同時に、腹の奥で雄が跳ねた。
放たれたモノが、波のようにじんわりと広がってゆく。腸壁に絡み付き、今夜のことを体に刻み込まれる。
訪れた静けさの中。二匹の雄の身体と息遣いだけが重なり合っていた。
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