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第7話 チャーハンの炙りチャーシュー載せ
御厨に着く頃には、晴に背負われた白瞑がぐったりしていた。
「わわわ、大変だ。白瞑様、ここで横になって待っていてくださいね」
休憩スペースの長椅子に白瞑を寝かせる。晴はエプロンを締めた。
「すぐにできて、お腹に溜まるものがいいよね。昨日、作ったチャーシューがあるから……」
釜を確認する。ちょうど二人分くらいの米が残っている。
「うん、決めた」
野菜とチャーシューを細かく刻んで炒めると、ご飯と溶き卵をフライパンに投入する。
「師匠がくれた大きいフライパン、とっても便利」
大きさと同じくらい、深さもある。焼き料理から煮物まで、何でも作れるので重宝している。
ご飯がパラパラになった時点で引き上げる。今度は、厚切りチャーシューを弱火にかける。その隙に卵スープを作った。
「ん……とても良い匂い」
白瞑が目を擦りながら起き上がった。
「白瞑様、ちょうどできました。チャーハンの炙りチャーシュー乗せと、卵スープです」
黄金色を醸す米を眺めて、白瞑が目を見開いた。
「短冊、出していないのに。食べて、いいの?」
「どうぞ、召し上がれ」
白瞑が匙を持って、ぱくりとチャーハンを頬張った。目がキラキラして顔が感動している。二口、三口と食べ進む。
「美味しいですか?」
晴の問いかけに、白瞑が頷く。食べる手が止まらない。
「ふふ、良かったです」
向かいにかけて、晴も食事をし始めた。その姿を眺めて、白瞑が手を止めた。
「晴も、同じものを食べるのか?」
「僕のお昼ご飯にしようと思っていた食事だったんです。僕と同じで、すみません」
フルフルと、白瞑が首を振った。
「このチャーハンは、晴のお勧めか?」
「僕の大好きな料理なので、お勧めですよ」
白瞑がとても嬉しそうに笑んだ。
(わぁ、かわいい顔)
やっと笑った顔が見られて、晴はほっとした。さっきまで暗い顔をしていたし、ぐったりしていたから、心配だった。
「チャーハン、美味しい。スープも、美味しい」
パクパク食べる白瞑の姿が、ぼんやりと輝き出した。神力の粒子が全身を覆っている。
「あれ……白瞑様?」
十歳くらいの少年だった白瞑が、十五歳程度の姿に成長した。
「晴の御饌のお陰で、神力が戻り始めた。もう少し、ここで御饌を食せば、神力が戻りそうだ」
白瞑が、微笑む。さっきより落ち着いた雰囲気だ。
「良かったぁ。それじゃぁ、僕が毎日、御饌を作りますね」
「それまで、ここにいてもいいだろうか?」
白瞑が申し訳なさそうに問う。
「勿論です。あ、でも……僕が毎日料理をするし、食材が届いたりするから、神世に比べたら騒々しいと思います。それだけ、ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げる。
白瞑が、激しく首を振った。
「むしろ、邪魔をするのは私のほうだ。置いてくれて、ありがとう」
はにかむ白瞑が可愛らしくて、晴は微笑んだ。
「食べたいもの、何でも教えてくださいね」
白瞑の目が、キラキラと輝いた。
「晴が食べる食事と、同じ食事がいい」
「僕と、同じ? それで、良いんですか?」
神様なのに、と思うより早く、夕暮の神の短冊が浮かんだ。夕暮の神と同じ注文をされた気になった。
「常世の食事に、興味があるんだ。御饌で上げないようなものを、食べてみたい」
白瞑の頬が赤い。照れているみたいだ。
「そういうことなら、わかりました」
晴は胸に手をあてて、頷いた。
(ビックリした。やっぱり夕暮の神様なのかと思っちゃった)
ちょっとだけ、胸がドキドキした。
「僕は、御饌にも常世の食事と同じものを作って供えること、多いんです」
歴代の御厨守に比べると、御饌も常世の料理のアレンジが多いと思う。神世の食材を使っていれば料理の種類に縛りはないから、自由に作っている。
「出さないようにしている料理もあるから、そういうの、一緒に食べましょう」
白瞑が目を輝かせて頷いた。
「私は料理の種類をあまり知らないから、美味しいものをいっぱい、教えて欲しい」
白瞑の話を聞いて、夕暮の神が浮かんだ。もしかしたら夕暮の神も白瞑と同じようにメニューを知らなかったり、より多くの料理を知りたいと思っているのかもしれない。
「僕が好きな料理をたくさん作りますね。常世にいる間に、美味しいお料理たくさん覚えていってください」
晴は白瞑の手を握った。白瞑の指がピクンと跳ねた。
「う、うん……晴の料理を、たくさん教えて」
顔を逸らしながら、白瞑がすっと手を引いた。
(あれ? 手、握っちゃいけなかったかな)
白瞑が集中してチャーハンを食べ始めた。頬張る顔が幸せそうだ。
晴は、その姿をほくほくした気持ちで見守った。
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