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第33話 時の大社

 白瞑の屋敷の縁側、昼間にここにいるのは、変な気分だ。晴は白瞑と向かい合って両手を握り合っていた。 「素直な気持ちを素直に話せばいい。時の神は総てを見透かしているから」 「うん、わかった」  晴は白瞑の手を強く握った。 「白瞑、僕ね。神世に来た時は伴侶ってわからなかったけど。今は、一緒に生きる大切な相手なんだって、離れたくなくて大切にしたい人なんだって、わかったよ」  白瞑が目を見開いた。 「晴は……私が思う以上に、気持ちを育ててくれていたんだね」  握った手を持ち上げて、白瞑が晴の手の甲に口付けた。 「必ず一緒に、帰って来よう」 「うん」  白瞑の手から茜色の神力が浮き上がる。優しい神力が、二人の全身を包み込んだ。晴はゆっくりと目を瞑った。  次に目を開いた時には、大きな御社の前にいた。晴の手を握った白瞑が御社を見上げていた。同じように晴も大社を見上げた。 「ここが、時の大社……」  白瞑が、握っている晴の手を引き寄せた。 「時の神が坐す時の間は、この大社の最奥だ。そこまでは、大社の中の回廊を進むんだけど」 「回廊? じゃぁ、戻ってきちゃうんじゃないの?」  白瞑が首を振った。 「時の大社の回廊は、単純に廊下が繋がる訳じゃない。時が飛ぶんだ」 「時が、飛ぶ? 色んな時間に飛ぶの?」  白瞑が頷いた。 「奥の間に辿り着けるかどうかも、試験になる。だからね、もし私とはぐれても、真っ直ぐに最奥を目指して。そこで合流できる」 「うん、わかった」  晴は、しっかりと返事した。白瞑とはぐれるのは怖いけど、また会えるのなら怖くない。 「じゃぁ、行こうか」  白瞑が晴の手を握り直した。その手が、いつもより冷たい。 (白瞑も緊張してるんだ。僕もしっかりしなくちゃ。迷惑かけられない)  晴も白瞑の手を強く握った。二人は時の大社の中に歩き出した。  中に入ってすぐ、回廊は始まった。  真っ直ぐに伸びる廊下を歩く。周囲は真っ白で、廊下だけが延々、続いている。  曲がり角があり、左に折れる。また真っ直ぐだ。 「本当に回廊なんだね」 「普段なら、すぐに奥の間に着くんだけどね。今日は、そう簡単に辿り着かせてはくれないかな」  白瞑の声が遠くなる。怖くなって、晴は握る手の力を強めた。 「晴? どうしたの?」  問い掛ける白瞑の顔が、霞がかって見える。 「白瞑の声が遠いよ。姿も霧に包まれているみたいで」 「晴? 何か話してる? 声が……聞こえ……」  白瞑の声が途切れ始めた。姿が霧に包まれて見えなくなった。 「白瞑……うわ!」  突風が吹いて、晴は目を瞑った。強い風に持っていかれそうになって、踏ん張る。 徐々に風が止んで、晴は目を開けた。 「さっきまでの場所?」  景色は変わらない。真っ白い空間に長い廊下が伸びている。 「白瞑……!」  隣に白瞑の姿がない。晴は、自分の手を眺めた。 「手を、離しちゃった」  不安と罪悪感が込み上げる。 「白瞑を探して……」  振り返ろうとした晴の頭に、白瞑の言葉が蘇った。 『たとえはぐれても、真っ直ぐに最奥を目指して。そこで再会できる』  晴は足を止めた。 「再会できるって、言った。白瞑が言ってた」  潤みそうになる目を、手で擦る。 「絶対に、白瞑と合流するんだ」  決意を言葉にして、晴は歩き出した。

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