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リヴィア教会のソフィア⑤

 それから毎日、ノアはアッシュと共にリヴィア教会へと足を運んだ。アッシュは毎回「なんでこの私が子守など……」とブツブツいっているが、教会に行くとソフィアはいつも「待っていましたよ」と笑顔でノアを迎えてくれる。ノアはそれがたまらなく嬉しかった。  やはり同じ花生みであるソフィアと過ごす時間は心地いい。  ソフィアはいつも花びらの形をしたクッキーと、ハーブティーをご馳走してくれる。今日のハーブティーはカモミールティーだったようで、爽やかな香りが口の中に広がっていく。  ノアが遠慮なく花びらの形をしたクッキーを頬張っていると、アッシュが眉間に皺を寄せながらノアに近づいてきて無遠慮に声をかけた。 「気が済んだのなら、さっさと帰りましょう」 「でも……」 「でも……ではありません。騎士団長である私の本来の仕事は、子守ではなく、陛下の護衛なのです。それに明日からは、しばらくここについてきてあげることができなくなりますから」 「え? そうなの?」 「私だって、そんなに暇ではないのです」 「えー……でも、まぁ、そうだよな……わかったよ」 「では教会の扉の所で待っていますから、それを食べ終わったら早く来てくださいね」 「うん」  ノアは残念そうに俯く。でも仕方がない。アッシュはこの国の騎士団長だ。そんなにも立派な役職についている人物が、自分に時間を割いてくれるだけ感謝しなくてはならないのだ。 「あんなことを言っていますが、アッシュだってノア様のことをとても気に入っているんですよ」 「え? そんなわけないですよ。逆に嫌われていると思います」 「そんなことはありません。ノア様はとてもお綺麗な方ですから。アッシュに誘惑されないよう、気を付けてくださいね」 「まさか、そんなこと……」  ソフィアが気を利かせてかノアの顔を見て微笑んだ。 「じゃあ、残ったクッキーを持ち帰れるように包んで差し上げますね」 「本当ですか? ありがとうございます」 「いいえ」  ソフィアはノアが食べ残したクッキーに、新しいクッキーを混ぜて綺麗な模様があしらわれたナフキンに包んでくれる。そんなソフィアの優しさが嬉しい。 「そう言えば、ノア様はもう花を生み出すことができるようになったのですか?」 「あ……はい。少しだけでしたら生み出すことができるようになりました。ただ、まだ花じゃなくて、蕾を生み出すことが多いんです。国王陛下が毎日タッピングをしてくれるので、少しずつですが、体も元気になってきました」 「国王陛下が、毎日タッピングを?」 「あ、えっと……、はい」  ソフィアに気を許していたせいなのか、なんとはなしに口走ってしまったことを、ノアは恥ずかしくなってしまい思わず俯く。それを見たソフィアが「ノア様は初々しくて可愛らしいですね」とクスクスと笑っていた。 「あんな大きな(かめ)いっぱいに花を生もうとしたら、体だって大きなダメージを負ってしまいます。ご無事でなによりです」 「え? ……ソフィア司祭がなんで瓶のことを?」  ノアが不思議に思い顔を上げると、ソフィアがまるで悪戯を思いついたかのようにノアの顔を覗き込んだ。 「そんなことより、明日はアッシュのいないときに、こっそり教会に遊びにいらしてください。美味しいケーキを用意して待っていますから」 「で、でも、そんなことをしたら……」 「シッ、アッシュに聞こえてしまいます」 「あ……」  ノアは咄嗟に両手で口を押さえて、こちらに厳しい視線を向けているアッシュのほうを恐る恐る振り返る。 「いいですか、ノア様。誰にも見つからずあの塔から抜け出す方法をお教えします」 「え? そんなことができるのですか?」 「誰にも教えたことのない秘密の通路があるんです。なんだか冒険みたいでしょう?」 「はい! ドキドキします」 「その方法はね……」  ソフィアがそっとノアに耳打ちする。なんだか秘密の作戦を立てているみたいで、ワクワクする思いを抑えることができなかった。

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