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第2話

それからというもの、彼氏と顔を合わせない日々が続いていた。 同棲しているはずなのに、一人暮らしをしているような感覚だった。 朝起きても隣に彼はいない。 帰宅しても部屋は静かなまま。 たまに帰ってきたと思えば、数日分の着替えを鞄に詰め込みながら言うのだ。 「悪い、また泊まり込みになりそう」 以前なら心配していた。 仕事が忙しいんだな、と信じていた。 けれど、あの日を境に、その言葉を素直に受け取れなくなっていた。 「そっか、頑張って」 そう返しながら、彼の背中を見送る。 扉が閉まる音がやけに大きく響いた。 静かになった部屋を見回す。 ふと違和感を覚えた。 ――あれ? 棚の上に置いてあったはずの腕時計がない。 クローゼットを開けば、いつも掛かっていた服が数着消えている。 洗面所に置いていた整髪料も見当たらない。 気のせいかもしれない。 そう思おうとした。 だけど、部屋のあちこちから少しずつ彼の痕跡が消えている気がした。 まるで、自分に気付かれないように。 まるで、この家から静かに出ていこうとしているみたいに。 そんな考えが頭をよぎり、慌てて振り払う。 信じたくなかった。 あの日見た光景も。 今感じている違和感も。 全部、自分の思い過ごしであってほしかった。 それなのに、胸の奥では分かっていた。 少しずつ。 本当に少しずつ。 自分の知らないところで、彼はこの部屋から、そして自分から離れていっているのだと。

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