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第6話
引っ越しも無事に終わり、新しい土地での生活が始まった。
知らない街。
知らない景色。
窓から見える景色も、駅前の店も、すれ違う人達も何もかもが初めてだった。
だけど、その環境は思っていた以上に快適だった。
誰にも会わない。
誰にも気を遣わない。
いつ帰ってくるのか分からない相手を待つ必要もない。
夕飯を作るかどうか悩むこともない。
静かな部屋で、自分の好きな時間を過ごせる。
それだけで十分だった。
プライベート用のスマホも新しくした。
電話番号も変えた。
連絡先を移す作業の途中で、あいつの名前が表示される。
少しだけ画面を見つめてから削除した。
確認画面が表示される。
迷うことなく了承を押した。
これで終わり。
そう思った。
幸い、あいつのSNSを知らない。
繋がっていたアカウントもない。
ブロックする手間すら必要なかった。
その事実に少しだけ安堵した。
本当に綺麗さっぱり消えたのだと実感できたから。
だけど、人間というのは不思議なものだ。
解放されたはずなのに疲れは消えない。
むしろ、今まで張り詰めていたものが切れた反動なのかもしれない。
朝起きるのが少し辛い。
仕事中にぼんやりすることも増えた。
食事も適当になった。
眠っても疲れが抜けない。
それでも。
「大丈夫」
誰に言うでもなく呟く。
大丈夫だ。
ちゃんと仕事には行けている。
生活もできている。
泣いてもいない。
だから大丈夫。
そう言い聞かせながら毎日を過ごした。
認めてしまえば崩れてしまいそうだったから。
傷付いていることも。
疲れていることも。
寂しいと思っていることも。
全部気付かないふりをした。
そうしていれば、そのうち本当に平気になる気がしていた。
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