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第13話
食事も終わり、せめて片付けくらいはしようと立ち上がる。
すると先輩に肩を押されるようにしてソファーへ戻された。
「あんたは座ってなさい。病人なんだから」
「でも」
「でもじゃない」
反論は許されなかった。
大人しく座ると、今度は水と薬を渡される。
「はい、飲んで」
「ありがとうございます」
言われるまま薬を飲む。
熱のせいか薬のせいか、身体はまだ少しだるかった。
キッチンへ戻った先輩は手際よく洗い物を始める。
俺はその背中をぼんやり眺めていた。
家事をしている姿なんて初めて見た気がする。
仕事中はいつも余裕そうに見えるのに、こういう姿は妙に生活感があった。
しばらくして洗い物を終えた先輩がこちらを見る。
「タバコ平気かしら」
「大丈夫ですよ」
そう答えると先輩は換気扇を回した。
引き出しから煙草を取り出し、慣れた手つきで火をつける。
赤く灯った火が小さく揺れた。
煙がゆっくりと上へ昇っていく。
「驚かないのね」
先輩が少し不思議そうに言った。
「たまに先輩からタバコの匂いしてたので」
その言葉に先輩は目を丸くした。
「あら」
そして苦笑する。
「バレないようにしてたのに」
「そうだったんですか」
「一応ね。会社だし」
煙を吐きながら肩を竦める。
俺はそんな先輩を見ながら言った。
「俺は好きですよ」
「何が?」
「嗜好を楽しんでる人って感じで」
好きな物を好きと言えて。
ちゃんと自分の時間を持っていて。
少し羨ましかった。
先輩は数秒黙った後、小さく笑う。
「褒めてもなんも出ないわよ」
「別に狙ってません」
「あら残念」
そう言ってまた煙草を口に運ぶ。
部屋には煙草の匂いが漂っているのに、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ少しだけ落ち着く。
静かな夜だった。
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