14 / 41

第14話

あの後、薬の作用なのか、それとも単純に疲れが溜まっていたのか。 気付けば俺はそのまま眠っていた。 ソファーで少し休むつもりだったのに、目を覚ました時にはベッドの上だった。 どうやら先輩が運んでくれたらしい。 時計を見ると朝になっていた。 身体は驚くほど軽かった。 額に手を当てる。 熱もない。 喉の痛みもほとんど消えていた。 「よし」 これなら帰れる。 そう思い、身支度を整えてリビングへ向かった。 しかし。 「あら、おはよう」 コーヒーを飲んでいた先輩が俺を見るなり言った。 「熱下がったからと言って帰さないわよ」 「え?」 「今日は休みでしょ」 図星だった。 「でも、もう大丈夫です」 「病人がよく言うセリフね」 先輩は呆れたように笑う。 「あと一日くらい大人しくしてなさい」 「そこまでしなくても」 「するの」 反論は一瞬で潰された。 結局、その日も先輩の家で過ごすことになった。 昼は軽めの食事を食べ。 夕方には少し散歩をして。 夜はまた早めに寝た。 何もしない休日なんて久しぶりだった。 だけど不思議と居心地は悪くなかった。 そして翌朝。 完全に熱も下がり、体調も元に戻っていた。 「ありがとうございました」 玄関で頭を下げる。 すると先輩は手をひらひらと振った。 「今度体調崩したらもっと早く言いなさい」 「気を付けます」 「信用できない返事ね」 そう言いながらも先輩は笑っていた。 久しぶりに少しだけ気持ちが軽かった。 そのおかげか。 次の日からの仕事は驚くほど順調だった。 まだ全部が吹っ切れたわけじゃない。 元彼のことを思い出さないわけでもない。 それでも。 前を向こうと思えるくらいには元気になっていた。

ともだちにシェアしよう!