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第17話
何があったのかは聞かない。
誰だったのかも聞かない。
先輩はしばらく黙ったまま俺が泣くのを待っていた。
ティッシュを握り締めたまま俯く。
涙は止まらない。
ずっと我慢していたものが溢れているようだった。
すると先輩が静かに口を開いた。
「あなたは頑張りすぎたのよ」
優しい声だった。
責めるでもなく。
慰めるでもなく。
ただ事実を伝えるような声。
「頑張りすぎてることも忘れて」
先輩は続ける。
「夢中になってただけ」
涙で滲む視界のまま顔を上げる。
先輩はまっすぐこちらを見ていた。
「だから、あなたは悪くないわ」
その言葉に胸が痛くなる。
「それだけ、その人に気を許していたのよ」
信じていた。
疑わなかった。
一緒にいた未来を信じていた。
だから傷付いた。
ただ、それだけ。
先輩はそう言いたいのだろう。
「だから自分を責めるのはやめなさい」
優しく言われる。
その瞬間。
また涙が溢れた。
止まりかけていたはずなのに。
次から次へと零れていく。
苦しい。
悲しい。
悔しい。
寂しい。
そんな感情が全部混ざっていた。
「っ……」
上手く息ができない。
言葉も出てこない。
ただ泣くことしかできなかった。
先輩がこちらに来る
ふわりと身体が包まれた。
優しく抱き締められていた。
驚いて目を見開く。
だけど先輩は何も言わない。
背中をゆっくり撫でるだけ。
まるで子供をあやすみたいに。
「いっぱい我慢したのね」
耳元で小さく呟かれる。
その言葉が最後だった。
堪えていた感情が完全に決壊する。
俺は先輩の服を少しだけ掴んだ。
泣き声を押し殺しながら。
先輩は何も聞かない。
何も言わない。
ただ離れずにいてくれた。
それが今は何よりもありがたかった。
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