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第22話
スマホの着信音で目が覚めた。
ぼんやりとした頭のまま画面を見る。
先輩からだった。
「もしもし」
『起きた?』
「はい」
少し掠れた声が出る。
先輩は小さく笑った。
『もうそろそろ着くわよ』
「わかりました」
短く返事をして電話を切る。
時計を見ると、思ったより長く眠っていたらしい。
それでも身体は軽かった。
昨日までの重さが嘘みたいだ。
顔を洗い、部屋を少しだけ片付ける。
すると五分もしないうちにインターホンが鳴った。
玄関を開ける。
「こんばんは」
買い物袋を提げた先輩が立っていた。
「あら」
先輩は俺の顔を見る。
「寝れたかしら」
「寝れました」
素直に答えると、先輩は満足そうに頷いた。
「なら良かったわ」
そのまま当然のように部屋へ入る。
すっかり慣れた様子だった。
靴を脱ぎ、買い物袋をキッチンへ運ぶ。
そしてジャケットを脱ぐと椅子へ掛けた。
ワイシャツの袖をまくり上げる。
続いて鞄からエプロンを取り出した。
「持参なんですね」
思わず口にすると、
「当たり前でしょ」
と即答される。
「服汚したくないもの」
そう言いながら慣れた手付きでエプロンを結ぶ。
完全に料理モードだった。
冷蔵庫を開ける。
材料を並べる。
鍋を出す。
無駄のない動きだった。
「何か手伝いますか」
一応聞いてみる。
すると先輩は振り返りもしない。
「あなたは大人しくしてなさい」
予想通りの返事だった。
「でも」
「病み上がり」
ぴしゃりと言われる。
「はい」
素直に引き下がるしかなかった。
「いい子ね」
少し笑った声が返ってくる。
俺はソファーへ移動した。
キッチンからは包丁の音が聞こえる。
時々フライパンの音も混ざる。
不思議だった。
誰かが家にいるだけでこんなに静かな部屋が賑やかに感じるなんて。
ソファーに身体を預けながら、その音を聞く。
どこか心地良かった。
そして少しだけ思う。
この時間が、嫌じゃないなと。
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