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第23話
作ってくれたのはシンプルなクリームパスタだった。
ベーコンとキノコだけの、ごく普通のパスタ。
特別豪華なわけじゃない。
高級な食材を使っているわけでもない。
それなのに不思議と美味しかった。
クリームは重すぎず、優しい味付け。
ミネストローネともよく合う。
「美味しいです」
素直にそう言うと、先輩は得意げに笑った。
「でしょ?」
その顔を見ながら思う。
後でソースの作り方を聞こう。
家でも作れたらいいかもしれない。
そんなことを考えながらフォークを動かす。
気付けば綺麗に完食していた。
「食欲もありそうね」
食器を片付けながら先輩が言う。
「だいぶ戻りました」
「なら良かった」
どこか安心したような声だった。
そして帰り支度を始めながら続ける。
「明日からまたお願いね」
「はい」
「無理したら許さないわよ」
「気を付けます」
「信用ならない返事ね」
そう言いながら笑う。
俺も少しだけ笑った。
穏やかな時間だった。
他愛もない話をして。
テレビを見て。
たまに先輩に小言を言われて。
そんな時間が思っていた以上に心地よかった。
少し前の自分なら信じられなかっただろう。
誰かといる時間がこんなに楽だなんて。
そうして先輩が帰った後も、部屋にはどこか温かさが残っていた。
ちゃんと食べて。
ちゃんと笑って。
ちゃんと眠れそうだ。
そんな風に思えた。
――その時までは。
トラブルというものは、案外その辺に転がっている。
幸せになりかけた頃を見計らったみたいに。
突然やって来るものなのだから。
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