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第33話

仕事が終わるや否や、俺は半ば強引に先輩の車へ乗せられた。 「え、先輩?」 「いいから乗る」 有無を言わせない口調だった。 結局そのまま先輩の家へ連れて来られる。 リビングへ入ると、ソファに座るよう促された。 「さて」 先輩が腕を組む。 「話してもらおうかしら」 「えっと……」 「さっさと話した方が楽よ」 「えっと……」 言いづらい。 こんなことで悩んでいたなんて言ったら呆れられそうで。 「ほら」 「えっと……」 意を決して口を開く。 「先輩の作ったリゾットが食べたいです」 部屋が静まり返る。 言ってしまった。 恥ずかしさで俯く。 数秒後。 「あんた……」 先輩が呆れたように呟く。 「それだけ?」 「はい……」 「そんなことで何日も悩んでたの?」 「はい……」 先輩はしばらく俺を見つめていた。 そして。 「あはははは!」 突然、大きな声で笑い始めた。 「もう無理!」 お腹を抱えて笑っている。 「そんなことであんな難しい顔してたの!?」 「だ、だって……」 「もっと深刻な話かと思ったじゃない!」 笑いすぎて涙まで浮かべている。 「白田がまた来たとか、仕事辞めたいとか、そういう話かと思ってたのよ!」 「違います……」 「リゾット!」 また笑う。 「もう、本当に面白い子ね」 俺は恥ずかしくて顔を覆った。 「言えなかったんです」 「なんでよ」 「リゾット食べたいから家行きますって変じゃないですか」 その言葉を聞いて、先輩はまた笑った。 「変じゃないわよ」 笑いながら首を振る。 「そんなことならいつでも言いなさい」 「いいんですか?」 「いいに決まってるでしょ」 先輩は立ち上がる。 「食べたいって言ってもらえる方が作る側は嬉しいのよ」 そう言いながらエプロンを取り出した。 「今日はサービス」 「ありがとうございます」 「その代わり」 先輩が振り返る。 「次からは一人で悩まないこと」 「……はい」 「リゾットくらいで何日も悩むなんて、あんたらしいけどね」 そう言って先輩は笑いながらキッチンへ向かった。 その後ろ姿を見ながら、俺も少しだけ笑ってしまった。

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