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第37話

何事もなかったかのように出社した。 いつも通りタイムカードを切る。 いつも通りパソコンを立ち上げる。 いつも通り仕事を始める。 昨日のことなんて最初からなかったように。 そう決めていた。 「おはよう」 聞き慣れた声がする。 振り返ると先輩が立っていた。 「おはようございます」 笑顔を作る。 先輩もそれ以上何も言わなかった。 昨日の電話のことも。 帰り際のことも。 恋人になったら、なんて言ったことも。 何一つ触れてこない。 だから俺も触れなかった。 いつも通り。 ただそれだけを意識する。 仕事に集中する。 資料を作る。 メールを返す。 電話を取る。 必要最低限しか周りを見ない。 先輩の姿も追わない。 笑い声が聞こえても気にしない。 昨日みたいな気持ちにはならないように。 仕事だけを見よう。 仕事だけ考えよう。 その方が楽だ。 その方がきっといい。 「これでいい」 誰にも聞こえないように小さく呟く。 先輩のことを考えなければ。 今まで通りの後輩でいれば。 きっと昨日のことも忘れられる。 そう思い込むように、俺はもう一度パソコンへ視線を落とした。

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