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第39話

今日が終わればやっと週末。 そのことだけを考えながら仕事を片付ける。 ようやく定時。 「よし」 小さく息を吐いて帰る準備を始める。 今日は真っ直ぐ帰ろう。 そう思った矢先だった。 「ちょっと」 聞き慣れた声。 振り返ると、先輩が立っていた。 笑っている。 ……ように見える。 だけど目が笑っていない。 「帰るわよ」 「え?」 「いいから」 反論する間もなく車へ乗せられた。 気付けば先輩の家だった。 玄関へ入り、靴を脱ぐ。 「先輩?」 振り返った瞬間だった。 壁際まで追いやられる。 「ちょっ……」 逃げ場がない。 先輩は両手を壁につき、俺を見下ろした。 「最近」 静かな声だった。 「仕事もご飯も一緒にしてないんだけど」 「はい?」 「何で?」 何のことか分からず目を瞬かせる。 「ねぇ」 先輩が少し顔を近付ける。 「避けてんの?」 「避けてないですよ」 慌てて首を振る。 「たまたまです」 「たまたま?」 先輩は眉を上げた。 「ほんと?」 「はい」 「ふーん」 信じていない顔だった。 そして腕を組む。 「この間、出張断らなかったって聞いたけど?」 その言葉に思わず固まる。 「あれは……」 「うん?」 「別に断る理由がなかっただけで」 そう答えた瞬間。 先輩が深いため息を吐く。 「はぁ?」 その声は低かった。 「別の男と出張行くとか」 少し間を置いて。 「許してないんだけど」 「……え?」 意味が分からない。 「先輩?」 「何」 「何でそんなに怒ってるんですか?」 本気で分からなかった。 すると先輩は額に手を当てる。 「あなたねぇ」 呆れたように笑う。 「この前何て言ったか忘れたの?」 「……」 思い出す。 『私は本気だから』 胸がどくりと鳴る。 「俺は」 言葉に詰まる。 何て返せばいいのか分からない。 先輩はそんな俺をじっと見つめていた。 その距離は近いまま。 逃げることもできず。 俺はただ立ち尽くすことしかできなかった。

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