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「わっもう2万人も観てる、こんな時間に……みんな暇なの?」
Live配信で電子ピアノの前、ワイングラスを傾けながら毒を吐く推し
あんたがこんな時間に配信したんだろと、みんなのツッコミのコメントが流れていく
事前告知なんてないゲリラLiveが通常運転の我らが推し。今日も今日とて美しいでございます(拝む)
「~~~?」
ん? 誰かいるのか? 後ろの方で声がする
「え、ちょっと待ってねみんな。なにー? そう、ミニスタライブ始めてるよ~」
誰と会話してるんだろう。気になる……
「みんなごめん、実は今日は特別ゲストが来ていま~す。それではどうぞ……ほら、もう紹介した。出てよ~」
雑な紹介とともに現れたのは黒の長髪を耳にかけて涼しそうな麻のシャツを着た俺もよく知った男だった
知っているって言っても会ったことはないんだけど……有名歌手だから知っている
三条匠海
ピアノを演奏しながら歌うスタイルでジャズ畑で育ったことを思わせる彼のパフォーマンスは観るものを虜にする
そんな彼と我らが推しが接点を持っていることも以前から知っていた
一緒にいるところを写真に撮られては度々ネットニュースの記事になっていたからだ
Hikaruは世間にオメガであることを隠していない。
アルファの三条とオメガのHikaru
グループ活動でオメガがいることは珍しいのでいろいろと噂されている
グループ内で付き合ってるんじゃないかとか、業界内に番 がいるんじゃないかとか……
「わぁ~すごい数観てるね、みんな暇なの?」
三条が右側から顔を出してこちらに手を振る
「それさっき僕が言った」
あははと笑いながら男の肩に手を滑らせるHikaru
男はそんなHikaruを熱のこもった甘い視線で見つめる
一瞬だけど二人の視線が交わる
なんか夜の雰囲気も相まって俺の脈の打ち方も重くなる
男がつまみを口にいれてワイングラスを手に取る
そのとき少し体をHikaruの方に傾けながらこちらを無言で見つめる
酔っているのか? いや、この男はいつもだるーんとした目で空中から物事を見ているような印象を受ける
のらりくらりと面倒ごとを避けながら進む。普段は我関せず主義だが、ここぞというときにはクラゲのごとくその毒針を刺しにいく
危険な男、そんな印象……でもそういう男ってモテるよねって話、Hikaruもきっと……
ーー都内マンションの一室
「ねぇミニスタライブ始めてもいい~?」
電子ピアノの前にひと足先に座る
離れた位置、さっきまで僕の体重で沈んでいたベージュのソファーからダルそうにこちらを見つめる天才ピアニスト|匠海《たくみ》
「えー……今からー?」
「ねぇ、いいでしょ~? |匠海《たくみ》~お・ね・が・い」
とりあえずにこりと微笑んで少し離れた位置にいる匠海へとウィンクを飛ばす
すると、のそりと身体を起き上がらせこちらにやって来る、ふふっチョロい
と、思っていたら
ずんずんずんと近くまでやってくる匠海。
え、どこまで来るの?
ついには僕の首元までやってきて、すんっと匂いを嗅がれる
そのまま吐息が降りかかる距離で
「いいけど、配信終わっても朝まで寝かせないよ?」
それでもいいの? と甘ったるい声でささやかれる
視線が交わる。目尻は下がって一見柔和なのに何考えてんのか分からない。ひょうひょうとした狩人のような男
この男に見つめられたら、数々の難所を潜り抜けてきた僕でも少したじろぐ
顎を引いて目線を逸らしながら答えた
「うっ……かかってきやがれ」
僕の反応に満足したのか匠海はすっと距離をとる
「ふっ、じゃあワインと、なんかおつまみ持ってくるから待ってて」
そう言って彼はキッチンに向かう
僕はこの後のねちっこい行為を想像して気が重くなりながら配信の準備をするのであった
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