8 / 11
8
「光、なんでそいつの後ろに隠れるの?」
びくっ
そりゃ盾になりそうなものがこいつ(景人)しかいないからだよ!
僕は息をひそめる
薄暗い駐車場、重いコンクリートに囲まれた場所で匠海と景人はしばし睨み合っていた。
しかし、意外にも匠海が先に口を開いた……なんだかとても焦っている様子
「光っいい子だから僕のところへ帰っておいで!」
「……」
だんまりを極める僕の代わりに景人が答える
「光はあんたのところには戻らないそうだ」
「おいで、光」
それを無視して是が非でも僕を連れ戻そうとする匠海……なんだか執着がすごい。
いつもならきゅんってするセリフも悪寒へと変わる
震える体をなんとか抑えて匠海を盾にする。しかし、末端の手足までは震えを止めることができない
僕が震えてることに気付いたのか、景人が後ろ手にそっと僕の手を握る
景人が握ってくれていた手にぐっと力を入れ、自分で蒔いた種なのだから、自分で決着をつけようと動いたそのとき……
「えっなになにー君たち、ケンカ~? こんなとこマスコミに見られでもしたら明日には格好のネタだよ?」
現れたのは、若者から主婦層にまで人気のラジオDJ雪野 隆敏
雪野のおっさんは僕が新人の頃からお世話になっている業界の大御所だ
大御所だけど、気さくで付き人なんかもほとんどおらずブラブラと気の向くままに行動している変なおっさんだ
この人のおかげで幾分か空気が和らいだ
いまだ……!
「匠海、僕は今日は家に帰らない。また今度ゆっくり話そう? ね?」
匠海の目をまっすぐに見つめて言い聞かせるように言った
僕の真剣な表情にたじろぐ匠海
こういうときは素直なんだよな
「……分かった、でもそいつといるのは無しだよ?」
僕はちらっと景人の方を見る
「うん……」
たぶんね、心のなかで付け足して匠海を見送る
「なになに? 痴話 喧嘩?」
おっさんがどこか楽しそうである
紫がかった黒い車がブォンと音を立てて発進するのを見届けて
店へと向かおうとしたそのとき
ホッと胸を撫で下ろして気付く
そういえばさっきから少し身体が熱いな
張り詰めた空気のなかで緊張していたのだろうか汗がつーっと背中を伝う
景人の車に乗り込む
「ちょっとクーラーつけていい?」
「えっこの時期に?」
「ごめん、ちょっとだけ」
「光、大丈夫か? 顔が赤いぞ」
景人が僕の頬へそっと触れる
びくっ
「っ、」
なんだ? いまの電気が走ったような……静電気? じゃないよな
「大丈夫か? 今日はもう休んだ方が……」
「ぅ、ん……でも家には帰れない」
「ホテル? この辺り空いてるところあるかな?」
景人がスマホで調べてくれている
どんどん体温が上がってくる
「はぁ、はぁ」
「いや病院か、?」
僕の尋常じゃない様子に病院を検索し出す景人
だが、僕はそれを制するように景人の腕へと手をかける
「お家、おうちがいい景人の……」
なんだ? 僕、何を言っているんだ? 自分でも分からない。勝手に誘うような言葉が熱い息とともに口をついて出てくる
「光っ、」
「あ、あつい……つれてって、はぁ」
ごくりっ景人の喉が鳴った気がする
そんな、そんな目で見ないで
景人の目に映る自分の顔が欲している。
なにを?
身体を満たすあの快感を……
景人……一度だけ聞くね、
僕たち、友達、だよね……?
ともだちにシェアしよう!

