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第17話 【オーウェン視点】決裂
『デヴロー家と関わるな』という父の言葉に僕は戸惑っていた。僕の中の記憶は曖昧で、リリズがそんなことをしたなんて思えなかったから。
「──そんな…でもリリズは僕に何も言わかなった。なぜあの時の子どもがリリズだとわかるの!?」
父は眉を寄せる。
「俺に使ったのと同じ力を息子にも使ったな。カシアンは記憶を読んだり消すことができる」
「リリズは子どもの時のことを覚えていないの?まさか、 今記憶を失っているのも同じことをされたから?」
父は押し黙る。
リリズは利用され、子どもの頃の記憶を消されている。
ハルメレイ家のことにまさか自分が関わっているとは思っていない…
「お前、まさか奴に愛情を持っているのか?」
父の眼差しは僕の思い出のなかにある父のままなのに、なぜかいまはその眼差しを怖いと感じてしまう。
「僕は…」
「あの夜、奴の手から意思を読み取った。あれは…オーウェン、お前の血だった」
父はリリズを襲った夜のことを言っている。
あの時負傷した僕にリリズが触れたから、その血が付いた。
つまり…リリズに付いた僕の血に父さんが触れて、意思が伝わったのだとオーウェンは理解した。
──血を介して、僕達は意思を伝えることができるから
「父さんの言う通り、僕はリリズを特別に思っています。僕達は “共鳴“ することができるんです」
「共鳴は別に珍しいことじゃない」
「嘘です、僕はいままで生きてきて共鳴なんてしなかった」
父は諭すように言う。
「お前は長く親からも貴族社会からも離れていただろう? 貴族同士なら似た力に共鳴することはよく起こる」
「…違う」
オーウェンは自分に言い聞かせる。
リリズに対しての共鳴は特別だと。
でも、本当にそうだろうか…?
さっき父さんが怒りを口にした瞬間、わずかに引っ張られる感覚がした。
違う、違う、違う…
オーウェンは理解しはじめていた。初めてリリズを知った時の胸の高鳴り。
衝撃とともに身体が震えた。
あの時、自分にとってリリズが特別な存在だと強く感じた。
でもそれは、自分が “憎むべき敵“ に出会ったことを本能で感じとっていたからかもしれない。
自分の中のハルメレイの血が “許すな“ と語りかけてくる。
──子どものころ、僕は寂しかった。
母から離されて知らない場所に来た時、「僕が帰ろうとすれば母が困るから」と毎日言い聞かされていた。
しばらくは人がいなくなると泣いて、なぜこんなことになったのかを考えていた。
でも、答えはなくて。
やがて“これが普通だと思うようになった。
どんなことにも感情をなだらかにして、外面だけは笑って過ごした。
笑っていれば幸せが来る。
母の側で守ることができないかわりに、母が言っていた言葉を守りたいと思った。
やがて、穏やかに笑えるようになった僕は、自分が今辛いのか悲しいのか何が嫌なのかにも、まったく興味がなくなった。
リリズに共鳴するまでは、嬉しいということがどんな感覚なのを忘れていたのだと思う。
──オーウェンは強く目を瞑る。
…リリズ、僕はあなたを殺せることが嬉しかったの──?
見えていた世界が覆る
自分が何者なのかもわからない
──だけど
だけどやっぱり、これは違う
オーウェンは起こる出来事を“普通“と思うことをやめた。
自分自身でなだらかな感情に抗うように。誰かの意見に寄せようとする気持ちを振り払う。
「父さん、あなたが生きていてくれたとはとても嬉しいです──でも次にリリズに何かするなら、僕はあなたを殺してしまうかもしれない」
「オーウェン…」
「僕の血を “読んだ“ ならわかるでしょう?」
──リリズを愛している
あの時父は僕の意志に触れて、リリズを傷つけることを躊躇していた。
「オーウェン、あの家に利用されるだけだぞ」
「覚悟はしています」
僕たちの力は “伝達“ の能力だけども、家族にはこの力は必要ない。
僕の頑固な性格は父譲りだ。
父は僕の言葉に抗うことはなかった。
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