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第一章 高等部 4話 はじめて会った日4

政輝が転校してから、1週間が過ぎた頃だった。 政輝は給食の時間が嫌いだった。 うるさいから。 食べて、喋って、笑って、椅子を引いて、誰かが牛乳をこぼして、誰かがそれを見て笑う。 それだけのことが、どうしてこんなに騒がしくなるのか、政輝にはよく分からなかった。 分かりたいとも思わなかった。 窓側の一番後ろ。 自分の席に戻って、牛乳のパックを開けた。 失敗した。 白い液体が机に広がる。 少しだけ。 でも、面倒だった。 政輝は手を止めたまま、数秒それを見た。 ティッシュを探す。 引き出しにはない。 筆箱の横にもない。 ランドセルのポケットにも、多分入っていない。 舌打ちしたくなって、やめた。 この学校では、それだけでも誰かが振り向く。 「久遠くん」 顔を上げた。 光出涼が立っていた。 手にティッシュを持っている。 黒い髪。 白い顔。 少し眠そうに見える静かな目。 騒がしい給食の中でも、光出はいつも少しだけ音が少なかった。 「使う?」 政輝は一瞬、返事を忘れた。 それから、ティッシュを受け取る。 「……どうも」 「うん」 光出はそれ以上何も言わなかった。 牛乳をこぼしたことを笑うわけでもない。 大丈夫かと大げさに聞くわけでもない。 ただ、必要そうだったから渡した、という顔で、自分の席へ戻っていく。 政輝は机を拭きながら、少し思った。 変なやつ。 最近、そう思うことが増えていた。 話しかけてくるわけではない。 絡んでくるわけでもない。 でも、どこかにいる。 教室の中で、ふと目に入る。 飼育棚の前にいたり。 友達の話を聞いていたり。 先生に頼まれた紙を配っていたり。 いつも中心にいるわけではないのに、人が自然に光出の方を見る。 それが少し変だった。 政輝には、なぜかまだ分からなかった。

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