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第一章 高等部 6話 文化祭準備2

「久遠」 横から男子が声をかけた。 「暇なら手伝えよ」 「暇じゃねぇ」 「何してんの」 「見張り」 「何の」 「知らねぇ」 「適当すぎる」 政輝は返事をしない。 男子は笑って、段ボールを指した。 「これ体育館まで運ぶんだけど」 「無理」 「即答すんな」 「重そ」 「だから手伝えって」 「だりぃ」 そう言いながら、政輝は壁から背中を離した。 男子が少し驚く。 「え、やるの?」 「通路塞がってんだろ」 「絶対それ理由じゃないだろ」 「うるせぇ」 政輝は段ボールを一つ持ち上げた。 そこそこ重いはずなのに、片腕で支え直す。 近くにいた下級生が「あ、ありがとうございます」と言うと、政輝は目も合わせずに短く返した。 「別に」 言い方は雑だった。 けれど、困っている人間を無視するほど冷たくはない。 面倒だと言いながら、手が空いていれば持つ。 邪魔ならどかす。 転びそうなら支える。 政輝はそういう人間だった。 涼はそれを見ていた。 政輝は段ボールを運びながら、視線だけで涼の方を見る。 涼は今、資料棚の前に立っていた。 厚いファイルを二つ抱えている。 別の教師に呼ばれ、そちらへ向こうとして、ほんの少しだけ肩が落ちた。 ほんの少し。 誰も気づかない。 政輝は段ボールを体育館前へ置くと、そのまま戻った。

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