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第一章 高等部 9話 はじめて遊ぶ日5
その日から、二人が話す時間は少しずつ増えた。
とはいえ、劇的なことはなかった。
ただ、光出が飼育棚の話をする。
政輝が本の話を少しだけ返す。
給食で光出の箸が遅いと、政輝が「それ食わないなら寄越せ」と言う。
プリント配りを光出がやりそうになる前に、政輝が取る。
外へ誘われた時、政輝がたまに混ざる。
たまに、断る。
でも断っても、光出は変な顔をしない。
「そっか」と言って、また別の日に聞く。
そういう日が続いた。
ある日の放課後、光出は飼育棚の前で亀の水を見ていた。
「少し汚れてる」
政輝は後ろの席で本を閉じた。
「替えんの?」
「うん」
「一人で?」
「うん。すぐ終わるよ」
光出はそう言って、水槽に手を伸ばす。
政輝はしばらく見ていた。
今日は、光出の動きが少し遅い。
朝からそうだった。
友達と話して、笑って、授業も普通に受けていた。
でも、休み時間に一度だけ机に伏せていた。
本当に少しだけ。
誰にも見られていないと思っていたのだろう。
政輝は見ていた。
「俺、持つ」
政輝が立った。
光出が振り返る。
「え」
「それ重いだろ」
「水、少し減らすから大丈夫だよ」
「遅い」
「久遠くん、亀触れる?」
「亀くらい触れる」
「噛むかも」
「亀だろ」
「亀も噛むよ」
「うるせぇ」
光出は笑った。
水槽を二人で持つ。
水を替える。
亀を一時的に箱へ移す。
光出は手順を丁寧に説明した。
政輝は半分くらいしか聞いていないふりをして、でもちゃんと覚えた。
「もっとゆっくり」
「うるせぇ」
「亀が驚く」
「亀の気持ち代弁すんな」
「大事だよ」
「そうかよ」
亀はゆっくり首を引っ込めた。
光出が少し笑う。
「ほら、驚いた」
「元からそんなだろ」
「失礼」
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