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地方ロケ③

地方ロケ二日目。 天馬は結局朝まで帰って来ず寝不足のまま今日を迎えた。 自業自得だなと思う。 「ねむ」 ホテルのロビーで天馬は魂の抜けたような声を出した。 「人との約束守らないからだろ」 「すんませーん」 全然反省などはしていない。 朝食を済ませるとロケバスへと乗り込む。 今日の撮影場所は神社だ。 しかも、よりによって寝不足の天馬と相性が悪そうな神社巡りだった。 ロケバスへ乗り込んだ瞬間から、死んだ魚のような目をしている。 それでもカメラが回れば笑顔になるのだから大したものだと思う。 「げっ……階段」 神社へ着くと目の前には長い石段が続いていた。 見上げるだけで嫌になるくらいには長い。 「帰りたい」 「俺も」 「神様も寝不足の人間に優しくしてよ!」 天馬は訴えるように石段を見上げる。 「誰のせいだよ」 「昨日の俺?」 疑問形だった。 そう言いながらも、天馬は重い足取りで石段をのぼり始める。 その背中を見ながら柊も続いた。 途中で何度か休憩を挟みながら、ようやく本殿へ辿り着く。 「五分後、撮影始めまーす」 スタッフの声が飛ぶ。 天馬は途端に背筋を伸ばした。 数秒前まで死にそうな顔をしていた男とは思えない。 「がんばれ」 「おわったらおみくじ」 「俺もしたかった」 そう返しながらお互い立ち位置へ向かう。 撮影は順調だった。 神社の歴史を聞いて。 境内を歩いて。 参拝客と軽く会話をする。 天馬もカメラが回り始めれば寝不足など感じさせない。 やっぱりプロだなと思う。 「おっけーです!」 スタッフの声が響く。 その瞬間だった。 「西条さん!おみくじ行くよ!」 天馬は誰より早く本殿へ向かって走り出した。 「子供かよ」 思わず呆れる。 けれど柊も自然とその後を追っていた。 おみくじを引き終えると、中を開く。 「どうでした?」 隣から覗きこんできた天馬へ紙を見せる。 「末吉」 「微妙」 「お前は」 「大吉イエーイ!」 腹が立つ。 「なんて書いてあるんですか」 そう言われて視線を落とす。 仕事運。 健康運。 金運。 そして恋愛運。 ひとつずつ目を追っていた時だった。 【求めるもの近くにあり】 その一文に思わず目が止まる。 「ほーん」 「なになに」 天馬が紙を奪うように覗き込んだ。 数秒黙ったあと口を開く。 「もしかして俺!?」 「なんでだよ」 「ずっと近くにいるし」 軽くスルーすると天馬は傷付いたように胸を押さえる。 けれど数秒もしないうちに立ち直ったみたいだった。 「俺じゃないか」 勝手に納得したように頷いている。 その様子を眺めながら、もう一度おみくじへ視線を落とした。 ――求めるもの近くにあり。 ただの偶然だ。 そう思うのに、紙をそっと財布へとしまった。 「次の現場行きマース」 スタッフの声に顔をあげる。 参拝客で賑わっていた境内を後にし、ロケバスへと向かった。 隣を歩く天馬はさっき引いた大吉をまだ眺めている。 「結んでこなかったの」 「よく言うよ。西条さんだって財布に閉まってたくせに!」 思わず言葉に詰まる。 なぜ財布へと、しまっているのか自分でも不思議だった。 そもそもおみくじを引いて、目がいくのはいつも健康運と金運だ。 「ほんとにな」 小さく呟く。 天馬は不思議そうな顔をしたけれど、特に聞き返してはこなかった。 ロケバスへ乗り込むと、窓の外の景色がゆっくりと流れ始める。 そのまま現場へつくと、天馬も自分も淡々と仕事をこなした。 ようやく神社巡りのロケは撮影が押すこともなく無事に終わった。 打ち上げをしようとスタッフ達に誘われたが、そんな気分でもなく断った。 あれに付き合えば今日中に帰れそうにない。 名残惜しそうにしていた天馬を半ば無理やり車へ押し込み、今回の仕事はようやく終わった。 家に帰ったら、アルストロメリアの水をすぐに替えてあげよう。

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