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第5話
才能がなくてもやめられないのが残酷なところだ。
諦めれば良いのに、惨めになっても縋ってしまう。
例え、牙が一本になろうと噛み付いて離れないんだろうな。
作家の性ではない。
業でもない。
ちっぽけなプライドだ。
そんなもので腹が膨れる訳でもないのにみっともなく守ってしまう。
先生はどうでもいいとばかりに言い放ったボツ原稿でも、大切に扱うのはそのせいなんだろう。
「なんで、これはボツなんですか」
「んー…、そうだね。
俺がそう思ったから」
これだけのものを平気でボツに出来ることこそが本物なんだ。
自分には到底書けない物語をゴミと言い捨てる。
それも感覚で、だ。
凡人は天才を理解出来ないのだろうか。
天才は凡人を理解出来ないのだろうか。
こんな風にボツ原稿を読ませてもらったって
不安が募るだけだ。
AIにプロットを投げれば評価される言葉はいくらでもつくれる。
多くの人が共感し、泣かせることだって出来るだろう。
けど、そんなの糞食らえだ。
これは俺の夢なんだ。
俺以外の誰がこの夢を叶えてくれる。
いや、先生にだって叶えられたくない。
自分のこの手で掴みたいんだ。
例え血を吐いても。
それさえネタにして……図太く生きてみたいんだ。
「面白いかい?」
「はい。
すごく」
「そうか」
口を衝くのは正直な肯定。
だって、先生から見たらゴミでも俺にとってはそうではないから。
愛おしいとさえ思う。
愛された言葉だから。
悔しいなんて思うのは烏滸がましいのに思ってしまう。
あぁ…こんな文を書いてみたい。
どんな気持ちになるのか知りたい。
それをゴミだと捨ててみたい。
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