6 / 6
第6話
先生は、またまた床を蹴った。
ゴロゴロっとキャスターが音を立てて、目の前に先生がやって来る。
耳の後ろ辺りの髪が跳ねているのに、その目は真っ直ぐで男らしい。
「何故ボツか聞いたね。
なら、これに俺の名前を添えても良いのかい?」
一気に距離が詰められ、ドキッとした。
これに、先生の名前が…
要は判子だ。
自分が書いた証明に名前を添える。
自信作だ、と世に出す為に。
それをボツにした作品に添える。
「…駄目です」
「何故?」
いつも子供みたいにしているのに、時々こうして年相応の大人の顔になる。
知らない男の顔をして見詰めてくる。
「先生自身が、これをゴミだと言い切ったからです」
作品は他人の評価を獲るものではない。
自分の心の問題なんだ。
多くの人からのいいねや賞賛なんて、先生は興味がないんだ。
たった一人、自分自身の為に書いているから惹き込まれる。
この13ヶ月で学んだことを俺は裏切ってしまったから空っぽなんだ。
「俺は、評価がほしくてさっきの話を書きました」
「うん」
「だから、それはつまらないんです」
「そうかい」
この話は先生が正直に書いたから美しい。
肘掛けに肘をつき、そこに顎を乗せて、読めない口調で生返事をされても怒れない。
だって、先に不躾なことをしたのは俺だから。
ともだちにシェアしよう!

