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第6話

先生は、またまた床を蹴った。 ゴロゴロっとキャスターが音を立てて、目の前に先生がやって来る。 耳の後ろ辺りの髪が跳ねているのに、その目は真っ直ぐで男らしい。 「何故ボツか聞いたね。 なら、これに俺の名前を添えても良いのかい?」 一気に距離が詰められ、ドキッとした。 これに、先生の名前が… 要は判子だ。 自分が書いた証明に名前を添える。 自信作だ、と世に出す為に。 それをボツにした作品に添える。 「…駄目です」 「何故?」 いつも子供みたいにしているのに、時々こうして年相応の大人の顔になる。 知らない男の顔をして見詰めてくる。 「先生自身が、これをゴミだと言い切ったからです」 作品は他人の評価を獲るものではない。 自分の心の問題なんだ。 多くの人からのいいねや賞賛なんて、先生は興味がないんだ。 たった一人、自分自身の為に書いているから惹き込まれる。 この13ヶ月で学んだことを俺は裏切ってしまったから空っぽなんだ。 「俺は、評価がほしくてさっきの話を書きました」 「うん」 「だから、それはつまらないんです」 「そうかい」 この話は先生が正直に書いたから美しい。 肘掛けに肘をつき、そこに顎を乗せて、読めない口調で生返事をされても怒れない。 だって、先に不躾なことをしたのは俺だから。

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