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第9話
自分でも思う。
めんどくさい性格だって。
けど、26年これで生きてきた。
矯正するには同じだけの年月が必要だろう。
その時の年齢を計算すると絶望するばかり。
だが、明日から180度違う考え方が出来るかと言われたら絶対に無理だ。
こんな時、先生だったら「どうしたもんかねぇ」って言うんだろうな…
「真面目だねぇ」
「うわっ。
もー、拭けって。
雫落ちてきて冷たいんですけど」
「そのうち乾くからよ」
風呂から出てきた先生はまたキャスターチェアに腰掛けるとクルクルと回った。
最低限しか歩かないにしてもだらしなさすぎる。
ドライヤーをどこかに固定でもしてやればその前で大人しく回ってるだろうか…とまで真剣に考えてしまう。
駄目だ。
そこまで甘やかしたら、先生の人間性が破滅してしまう。
もう大分破滅してるけど。
脱衣所から続く雫の跡に一気に気が抜けた。
ティッシュでサッと拭いてしまおうか。
けど、正直今はめんどくささもある。
……乾くか
「そうだ。
見本誌、届いたらあげるよ」
「あ、駄目です。
俺、そういうところキッチリしたいんで。
ちゃんと買って先生の売り上げにしたいですし、うちの書店の売り上げにもしたいんで」
そこはしっかり線引きをしないといけない。
自分はあくまでも生活の手伝いをしているだけ。
賃金の発生する契約なんだ。
最低限の礼儀や敬意は払わなくては伝わらない。
そうでなくとも本屋はどんどん数を減らしていっているのに。
「早く読めるよ?」
「……」
「遅くとも3日前には届いてるから、発売日には読み終われるだろうし」
「…………」
「本人の前で読めるよ」
「か、買います。
……けど、読みに…来ても……」
「ハヤシライスと松福のクリーム大福、あと夏目くんが春先に買ってきてくれた柔らかい生地の中にクリームと果物が詰まったあれが食べたいねぇ」
「買ってきます…」
あぁ…、なんて甘い誘惑だ。
こればかりは、誘惑だと分かっているのに断れない。
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