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第11話

「うぃー、久しぶり」 「久しぶり。 遅れて悪い」 「仕事ならしかたねぇよ。 仕事があるのは良いことだしな」 大学時代の友人たちから飲みに誘われて顔を出したが、みんなスーツやオフィスカジュアルな格好をしている。 私服なのは自分だけ。 なんだか少しだけ居心地が悪いが、友人たちの顔を見れるのは嬉しい。 あの日に戻れるようだ。 とりあえずで注文したキンキンに冷えたビールで乾杯。 それを一気に喉を鳴らして煽る。 仕事終わりのご褒美にこれ以上の飲み物はない。 つまめるものをと注文したが、卓上はあの日とは変わっている。 あの頃は、からあげだのフライドポテトだの揚げ物がその多くを占めていた。 けれど、今は枝豆やサラダ、店長おすすめのお造りなどの健康に気を遣う物も並んでいる。 こういうところから痛感するのが一番エグい。 気持ちは若くても、身体は違う。 まるであの頃とは違うと分からせられているみたいな気分になる。 「ホント、マジ、上司と合わなくてしんどい。 ハラスメントとまではいかないような言い方すんだよ」 「大変だな」 「はぁ…、30までにはなんとか今の現状と変わっててほしいけど…無理かぁ」 アルコールのおかわりが進むと、話題は自然と私語とから家族の話へとかわっていった。 「やっぱり、子供出来るとかわるわ。 責任っつぅの? 張り合いが出来たっつぅか」 「分かる。 結婚が視野に入ると、自分の為だけに生きてらんねぇなって思うよな。 このタイミングで転職するか悩んだけど、転職先の方が退勤後の時間を有意義に使えるなら越したことはないんじゃないかって思ってさ」 「年収は?」 「変わんない。 前がブラックすぎたんだろ」 友人の言葉は最もだ。 若くもなければ年を取りすぎてもいないこのタイミングだからこその考え方。 誰かの為に生きること、誰かと生きること、どう生きるか、それを見据え足を地面に着ける時。 アルコールも手伝って、みんな饒舌に語っている。 「夏目はまだ書店? 最近、本屋潰れてるし大丈夫か?」 「あぁ、平気。 なんだかんだSNSでバズれば人も買いにくるし。 本屋さん大賞とか。 あと最近はシールとか」 「絵本ってどんなの人気? 4ヶ月だと早い?」 「いや、親の声掛けは大切だと思うし、特別早いってこともないんじゃないかな。 これから反応も増えてくだろうし…」 貼り付けた笑顔で、当たり障りのない、売り上げの良いタイトルをいくつか並べる。 結婚。 出産。 しあわせだろう。 しあわせだよな。 そういう顔をしている。 けど…、 先生、飯食ってるかな… またお菓子で済ませたりしてねぇかな… 俺は先生に会いたくてたまらなくなった。 あのマイペースさに巻き込まれたいんだ。 たまらなく、どうしようもなく。

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