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第14話
お待ちかねの俺のご帰宅だよ、とご機嫌なメッセージが届いた。
添えられた写真には数本の四合瓶が並んでいた。
お待ちかねはこっちだ。
「先生、俺です。
来ましたよ」
部屋を訪れれば早々に、いつものようにキャスターチェアに乗った先生が扉の奥から顔を出した。
いつもとなにもかわらない。
今はそれが酷く優しい。
先日のサークル飲みがいまだに尾でも引いているみたいだ。
「おや、早かったね。
やっぱり酒の魔力には勝てないかい」
「それは先生でしょう。
甘いの好きなのに酒も好きですよね」
「大人だからね」
「年齢以外に、具体的にどこら辺が大人なんですか?」
「納税しているところだよ」
この会話だ。
地に足がついていないというか、ズレてると言うか。
これが良い。
今は先生に逃げたい。
きちんと書店で買った先生の新刊も読み直した。
そうやってなんとか気を逸らしていたが、本物の先生が一番ペースを崩してくれる。
「ほら、手酌は出世しないと言うじゃないか。
遠慮なく注ぎたまえ」
「ほんと…」
出世なんて興味もないくせによく言う。
そもそも作家の出世ってなんだ。
実力主義社会だろ。
けど、先生らしい。
一応コンビニで甘い物を買ってきたが机の上にはお土産が広げられている。
手土産に買ってきた物は冷蔵庫の方が良さそうだ。
ついでに冷蔵庫の中を確認してしまうのは癖だ。
あと、グラスの用意もしなくては。
先生は手に紙コップを持っている。
流石に良い酒を紙コップで飲むのは酒造の方々に失礼すぎる。
買ってきたグラスを取り出すと先生は床を蹴って椅子のまま隣までやって来た。
「おや、センスの良いグラスだね。
俺のセンスかい?」
「俺のセンスです。
先生は紙コップでしょ」
「夏目くんの雇用主は俺だよ?
俺のセンスじゃないか。
さ、早く乾杯しようか」
「グラス洗って用意しますから待ってください。
つまみ食べるなら箸もいるでしょ」
「冷えたグラスかい?」
冷えてる訳がないだろ。
今、目の前で箱の中から取り出してるのに。
暴論と書いてマイペースと読ませるが先生だ。
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