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第23話

処刑台なんて端からなかった。 この部屋にあるのは本と、原稿と、ゴミと、先生。 ……本当にゴミが沢山ある。 お菓子のゴミがと紙コップがいつより多い。 お湯を沸かしている間にそれをゴミ袋に詰めてぎゅっと口を縛った。 新しいゴミ袋をセットしていると、キャスターが動く音がする。 どうせお菓子でも漁っているのだろう。 これからおやつを食べるのに。 5日ぶりなのになんだか久し振りな気がするのは先週あんなことをしてしまったから。 けど、先生はケロッとしてる。 やっぱり大人なんだ。 自分で自分の機嫌をとれている。 それに比べて俺ときたら。 濃い目に淹れたコーヒーに氷をたっぷり詰め込み急速にキンキンに冷やす。 そうでもしないともっとお菓子を食べてしまうから。 腹が減ってた方がお菓子はより美味いはずだ。 「先生、コーヒーです」 「おや、フロートかい。 センスがいいね」 罪悪感も手伝って甘やかすような物を作ってしまったが、まぁいいか。 アイスをのせるくらいで、特別手間のかかる物でもない。 血糖値は……、先生の身体だから……。 「甘いものはいいねぇ」 「あの、佐伯さんに一冊書いてみてほしいと言われたんです」 「おや」 「けど、迷ってて」 「なんでだい?」 聞きながらもアイスをスプーンで掬い大口を開けて食べた。 興味は半分はんぶんなのだろう。 半分でも興味を持ってもらえるだけ有難い。 「書けるかなって…」 「佐伯くんが見誤ると思うかい?」 今度は大福に手を伸ばしている。 そしてそれをハムっと頬張ると満足そうに頬を緩めた。 「彼は13年も編集者をしているよ。 そんな佐伯くんが選択を間違えると?」 「買ってるんですね」 「ん? そりゃ、俺の担当だからね」 「すげぇ自信…」 大福をぺろっと食べきったら、コーヒーを挟み、次はオムレット。 真っ白いクリームにフォークを突き刺すと中から出てきた果物に目を細めた。 「さくらんぼか。 初夏だねぇ」 四季の移ろいを楽しんでいるようで、次に口から出るのは子供のようなもの。 「種がなくて食べやすいのが更に良いよ」 けど、それが先生だ。 大人の感性で子供のようなことを言う。 だから作品も素直なんだ。 “らしさ”という個性がある。 それが魅力になる。 「おや、今度はキウイだよ。 贅沢だね。 夏目くんも食べたまえ」 「一応、2つとも先生の分で買ってきました」 「いつもなら糖尿病に気を付けろと言うのに珍しいね」 「謝罪の品ですし…」 「けど、夏目くんも食べなさい。 美味しいから」

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